ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:廊下ー

試合後、百目鬼雲山も闘技場から退場するとGPグループ代表の倉吉理乃が出迎えてくれた。そして廊下であるにもかかわらず理乃は床にぺたんと座って両腕を広げると雲山は理乃の胸に顔をうずめて抱きついた。

理乃「ありがとう雲山。」

雲山「……うん。」

よしよしと雲山の頭を撫でながら理乃は続ける。

理乃「相手にケガさせずに勝って偉いわ。」

雲山「…うん。」

理乃「約束を守ってくれたよね。」

「……うん。」

理乃「雲山も怪我をしないようにね。」

雲山「……うん。」

女性でナイスバディではあるにしても決して身長は大きい方ではない理乃に対して、絞り込んであるとはいえ巨体な雲山が抱きついている姿は何とも言えない絵面である。

それをやや離れたところから見ていた護衛の風雷コンビと秘書コンビ。

音市「…闘ってた時と同一人物とは思えないよな~」

美音「それが雲ちゃんのいいところでしょ。」

音市「いや…良いところかぁ?なぁ、風、雷?……おーい?風雷?」

風雷コンビに声をかけるが返事がない。何故かと思って横を見ると風太郎と雷太郎は後ろを向いて殺気を纏っている。

「クカカッ!ざまあねえなあ。」

突如、聞こえてきたその声に理乃に抱きついていた雲山も飛び離れて立ちあがった。

理乃「雲山?」

雲山「……貴様…!」

「百目鬼流……ウチのジジイから話だけは聞いてたぜ。古来から魏一族(俺達)と対立してきた一子相伝の暗殺拳。術理を極めたものは、鬼の力を得るとか。その鬼様があの程度の実力とは笑っちまうぜ♪」

雲山「理乃……許してくれ。「誓い」を破る。」

理乃「雲山…」

雲山「……この男は、「殺さなければ倒せない」」

「ネズミが相手じゃ物足りねぇだろ?魔人(俺)が遊んでやるよ。鬼(腑抜け野郎)!」

【禁忌の末裔】魏一族最凶、魏雷庵

雷太郎「お前」

福太郎「ふざけてるのか?」

雷庵に近い風雷コンビが動こうとしたが雲山がそれを止めた。

雲山「二人は理乃を守ってくれ。」

そう言い終えるや否や、雲山の姿が消え気がついた時には雷庵の前まで移動しており殴りかかっている。バチィっという音が鳴り拳が掴まれている。

雷庵「クカカッ!これが百目鬼流かよ。蠅より遅せえ。」

雲山「…これが「本来の」実力というわけか。魏一族。」

雷庵「ハァ?実力だァ!??引きだせるのかよ?テメーごときに。俺の実力がよぉ。」

一触発、というか既に臨戦状態に入っている二人。雷太郎と風太郎も飛びかからんとしている中、荘厳な声が飛んだ。

「勝手な真似をするでない。拳を収めい。雷庵。」

理乃「あら♪助かりますわ。魏一族のみなさん。」

廊下の奥から魏一族の長、魏絵利央を中心にホリス、怜一、堀雄が揃って近づいてきている。

雷庵「なんだお前ら?お前ら如きが俺を止められると思ってんのか?くだらねえ。全てがくだらねえ!!!この糞みてぇな大会もな!!優勝なんぞ知ったことじゃねえ!!今すぐ闘技者全員ブッ殺して幕引きにしてやるよ!!!」

絵利央「ほっほっほっ!皆殺しか。それもまた良し。…じゃがのう。お主、後悔するぞ?」

雲山の拳を掴んだままでいる雷庵に絵利央が近づいていく。

雷庵「あァ?ジジイ、どういう意味だ?ハッタリならテメーから殺すぞ。」

絵利央「阿保!まだまだ洟垂れには殺れんわい!……大会前、魏一族に「もう一件」の来ておったのじゃ。「UM社の他」からのう。」

すると絵利央は小さな声で何かを耳打ちした。

雷庵「!!……ジジイ…!テメェ…隠してやがったな?…大した悪党だぜ。わかったよ!あと少しだけ大人しくしておいてやる!」

そう吐き捨てて雲山の手を払い退けるとどこかへ行こうとする。

絵利央「さて、と……倉吉さん。ウチの馬鹿たれが迷惑をかけましたな。」

理乃「いいえ全然。お気になさらないで。」

雲山「……お前との決着は必ずつける。」

雷庵「ハッ!テメーが上がってこれたら、遊んでやるよ。簡単にはいかねぇぞ?何しろCブロックにはアイツがいる。」
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