ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

先の闘い、金剛と室淵は時間にすれば1分弱の仕合だったが、今仕合はそれ以上の速さで決着がついてしまった。

鞘香『なんという速さ!なんという結末!会場は今だに動揺に包まれています!仕合開始直後、百目鬼選手の無慈悲な一閃により秒殺決着!あまりの速さに私には攻撃の瞬間を視認することが叶いませんでした!』

どよめく会場、想定外の仕合決着の速さに仕合のオッズの拝金、また次仕合オッズの受付など係員達が右往左往している。

マイクを置いて鞘香が率直な感想を漏らした。

鞘香「わー……すごいね百目鬼選手。サー君、二回戦も大変そうだね。」

サーパイン「ああ。確かに強敵だ…だけどな鞘香、俺は今!!最高に燃えているぜ!!」

あの男……エンジンが違う!まるで鉄砲だ!0からトップスピードまで一瞬で加速してやがる!やっぱり、世界はとんでもなく広いぜ!!!


仕合後、【夢の国から来た男】根津マサミはスグに意識を取り戻したものの、力なく廊下の壁に背を預けて座り込んでいた。目の前にはホナルドが立っている。

根津「……決別のつもりだったんだァ。トーナメントの前に社長から聞いちまったんだ。」

ホナルド『……』

根津「TDL(ウチ)が東電の傘下になるってよォ…………本気(マジ)で好きだったんだよ。な~~んにも干渉されねえ自由なディスティニーランドが……。」

だけんど……俺が信じてた「夢の国」は、東洋電力と「裏取引」しちまった……「現実」に浸食されちまったんだァ。

ホナルド『……』

根津「だから俺は、夢を終わらそうと思ったんだァ。大好きなモッキーを理想のまま終わらせようってよォ。……笑っちまうだろ?こんな後ろ向きな気持ちで、勝てるわけなかったんだべ……」

涙を流して語る根津マサミに目の前に居るホナルドは被り物を外し落して叫んだ。

「……何独りであきらめてるんスか……そんな根津先輩「らしくない」っスよ……栃木の族はッッッ世界最強!!根津先輩は栃木の族の「希望の星」っス!次こそは必ず勝ちましょう!!!自分は「一生」ッッ!!先輩についていくッス!!」

着ぐるみの中から出てきたのはキンキンの金髪にサラシ、そして気合の入った当て字の刺繍が羅列されたズボンに足袋姿の女性。

【泡姫(マーメイド)】二代目総長、竹丸美姫

根津「…………美姫。……俺と一緒に出直してくれるか?」

美姫「押忍ッッッ!!!」

暴走族とレディースの頭二人が再起をかけると誓いあった。

その頃、栃木ディスティニーランド社長、夢野国博は叫びながら護衛を二人つけて死に物狂いで駆けていた。

夢野「根津のクソバカ野郎ォォ!!切り札の癖にあっさり負けよってからにいいいい!!クソオオオ!!東電に恩を売って「連中」とのパイプを手に入れるはずが!!このままでは私は、速水に消される!!クソッ!お前たち!金はいくらでも払ってやる!!命に代えても私を守るんだぞ!!!」

「おっほお♪その必要はありませんよぉ♪」

突如、薄暗い濾過の角から聞こえた不気味な声に夢野たちはビタッと動きを止めた。

夢野「だ……誰だ!?誰だ、貴様は!!??ハッ!?」

すると左右に居る護衛二人が床に倒れ落ちた。いったい何が起こったのかと視線を向けると人中のあたりが陥没しており銀色の小さな玉が二つ転がっている。

「おほほ♪根津と一緒に「毘沙門」から引き抜いたボディーガード。この程度の不意打ちに反応できませんか♪二流ですねー」

夢野「だッッ!だからァ!お前は誰なんだよォォォッ!!」

「私ですかぁ?私は……「豚」でございます。醜く肥え太った卑しい「豚」でございます。」

廊下の影から出てきたのはにったりといやらしい笑みを浮かべた坊主頭に無精ひげを生やしたタンクトップの中年オヤジ。【メディスンマン】蕪木浩二だ。

夢野「お……お前!メディスンマン!!お前が、東電の始末屋か!!」

蕪木「んふふぅ♪網代社長みたいに抵抗しないでくださいよぉ?すぐ終わりますから♪」

夢野「ヒイイイイッッ」
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