ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

背後に現れた対戦相手、闘技会中が騒がしいからとかではない、向こうが声をかけてくるまで気配を感じることができなかった。そんな強敵にマサミはゆっくりと振り向きながら語りかける。

根津「……わかる、ぜぇ。お前、すんげえ「強い」んだろ…なあ?だけんど…運が悪かったなあ。「今の俺」は、誰にも負ける気がしねェんだわ!おめえを倒すなんて簡単に……」

鞘香「もー!ダメじゃないですか!紹介の前に出てきたら!」

雲山「……いや……その…………すまん。」

解説席に居た鞘香が雲山に近づいて抗議をしていた。そしてそれに謝罪する雲山。

…………あれ?俺、ガン無視されてねえべか?

理乃「雲山~♪怪我に気をつけてね~♪」

さらに観客席の最前列からGPグループの代表、倉吉理乃が小さく手を振ってエールを送っている。それに対して雲山も小さく手を振り返した。

鞘香『えー、それでは改めましてご紹介します!身長200センチ体重99キロ闘技試合戦績1勝0敗!企業獲得資産12億1140万円!ゴールドプレジャーグループ百目鬼雲山ッ!!!』

「いいぞー!」
「フライング男ー!」

雲山「理乃ー!」

改めての紹介と同時に観客たちから色々と声が飛ぶも雲山は理乃に向かってて手を振り続けていた。

根津「…………よっしゃわかった。」

コイツ…完ッッッ全ッにナメくさっとんなァ!!!

鞘香が実況解説席に移動すると交代にレフリーのアンナ・パウラが闘技者達の間に立った。

アンナ「両者、開始位置につけ!」

雲山「……」

根津「……」

鞘香『さあ!まもなく第十仕合のゴングが鳴る!!!並び立つ両雄、その身長の高さはまるで巨人同士!なお、解説のジェリーさんはアメリカのお母様と国際通話中のため席を外しております。本仕合、ジェリーさんの代わりに解説を務めていただくのは……この方!第九仕合で二回戦進出を果たしたばかりの鎧塚サーパイン選手です!』

サーパイン「マイクなんていらねええええぜえええエエエエエッッッ!!」

【吠える闘魂】鎧塚サーパインは先の試合で折った傷を塞ぐため顔の中心に×の傷テープを張ってはいるものの、アロハシャツに着替えて仕合後だというのに元気よく……元気良すぎるほどに叫んでいる。

鞘香『サーパイン選手、体調の方は大丈夫ですか?』

サーパイン「絶好調だぜ鞘香アアアアッッッ!!」

実況解説席の真っ正面、つまりは一番遠い席で見学している【闘神】右京山寅はマイク無しでも聞こえてくる爆音声に……。

寅「……何やってるんだ、アイツは?」

鞘香『サーパイン選手は、この仕合の勝者と二回戦で対戦するわけですが……この仕合の展開、どう予想されますか?』

サーパイン「ウオオオオオッ!どっちも負けんじゃねええエエッ!!」

手を上げて仕合の合図に入ろうとしているアンナ・パウラは何で地声の方がデカいんだよ…集中できねえ…と思った。

アンナ「両者、構えてぇぇ!」

鞘香『さあ!両社が構えを取る!!果たして勝ち取るのは愛の戦士か!?はたまた夢の強兵!!』

理乃……この勝利をお前に捧げよう。

モッキー……お前の最期、俺が見届けてやっかんなァ。

アンナ「始めェェイッッ!!!」

開始宣言と同時に根津マサミが飛びかかった。瞬間、ズダアァァンッと音を立てて地面に倒れ落ちた。

そして「前」に存在していた雲山が倒れたマサミの「後ろ」に居た。

雲山「【雷閃】。疾風迅雷の鬼は、決して捕えられない。」

会場が静まり返る。いったいどうなったのか?誰もが思った疑問を口に出したのは実況の鞘香だった。

鞘香『な……!何が起こったアアアア!!』

アンナ「根津?根津!」

レフリーアンナが倒れてピクリともしない根津マサミに近づいて反応の確認を取るが頭上に両手をクロスさせた。

鞘香『アーーーー!!ここでストップー!勝負ありっッ!勝者!百目鬼雲山!!』

雲山「……馬鹿な男だ。「夢」はいつか醒める。だが、「愛」は不滅だ。」

勝者、百目鬼雲山

決着タイム…測定不可能(闘技仕合最速決着記録更新)。
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