ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

全力で絞め潰しにかかった賀露吉成。骨を砕き、内臓を押し潰すには十分な膂力だった。しかし、鎧塚サーパインは諦めなかった。捕えられ絞め潰される最後で最期の一瞬に肘を落とした。高硬度の肘骨を筋肉で締め上げた一撃は賀露の肉体を貫き頸椎そのものに直撃し、意識を断った。

霞んでいく景色の中に賀露吉成は……。

賀露『漁港を閉鎖する!?東電がそういってきたのか!?』

網代『ああ……職員の保養施設を建設するそうだ。』

賀露「馬鹿なことを!!?ここは国内有数の漁港高を誇る海だぞ!!?ここを閉鎖すれば、地元の経済は壊滅だ!!!」

網代『……東電が取引を持ちかけてきた。「建設予定地を変更してほしければ、東電の駒として、絶命トーナメントに出場しろ」と……』

予選を勝ち抜いた俺に速水はいった。「八百長に加担すれば港に手は出さない」と。

だが……昨晩届いた差出人不明の封筒。入っていたのは、一本のフラッシュメモリ。

俺の見たものは「絶望」だった。

東洋電力による「俺達の港」の再開発計画書。港を潰して建設する発電所を柱に「俺達の町」を「速水の帝国」に作り替える内容だった。

保養所建設など発電所誘致の方便。行政側との会談の盗聴記録、公的書類の数々……確信を抱くには十分だった。

俺達は利用されたに過ぎなかった。あの悪魔に……俺は決意した…必ず東洋電力に復讐すると。

俺は…………必……ず…………勝………………。

手を伸ばそうとする賀露の意識は完全に闇に消えた。仰向けに倒れて動かなくなるとレフリーアンナが近づいて確認をすると手を上げて叫んだ。

アンナ「勝負あり!!」

サーパイン「シャアアアアアアッッ!!」

鞘香『決まったアアアア!!サーパイン選手、二回戦進出を決定ーーーー!!』

「「「ワアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」」」

仕合の決着にサーパインは雄たけびを上げて観客もそれに共鳴するように叫びをあげた。

そんな歓声が聞こえてくる中、夜明けの村とあじろ水産の代表二人がいるVIPルームでは……。

網代「……え?」

実光「…逃げなされ。あの男は、裏切り者に情けなどかけぬ…八百長を破った理由はわかった。賀露君のことはワシが何とかしよう。今はただ、逃げなされ。」

網代「ッ!!」

網代光臨丸は鎧塚実光に大きく頭を降ろすと慌てて部屋から飛び出していく。VIPルームに残った実光は椅子に腰かけたまま厳しい表情で思案する。

八百長破りの後も、東洋電力から仕合中止の指示は来なかった。……やはりそういうことか。あの男は遊んでおるのだ。「革命」をまるで児戯のように……速水勝正。

奴にとってはトーナメントなど遊びにすぎんということか…………気にいらんのう。勝っちゃん。



部屋を飛びでて身の安全のために島から脱出しようと闘技場から離れようと駆けていた。

許せ!賀露!!!

その光臨丸の前に人影が飛び出てきた。

網代「お……!お前は確か「闘技者」の……!!!ま……まさかお前が、東電の刺客!!?」



鞘香『さあ!続く第十仕合は「栃木ディスティニーランド」根津マサミVS「ゴールドプレジャーグループ」百目鬼雲山!果たして生き残るのは、大人と子供どちらの「夢の国」か!??』

放送が響く誰もいない廊下のかげに網代光臨丸が頭に巻いていた鉢巻きと血がおちていた……。
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