ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

両雄睨み合うなかレフリーが中央に立つと腕を高く上げた。

レフリーアンナ「始めッッ!!」

Cブロック初戦、火ぶたが遂に切って落とされる。

開始宣言と同時にサーパインは弾丸のように飛び出した。

鞘香『おおおーーーーっと!やはり予想通り突っこんでいったのはサーパイン選手だァァァ!!』

ジェリー『NO!これは自殺行為デス!!』

サーパイン「先手必勝だァァァァ!!」

勢いのままに進軍するサーパインの目に映る賀露吉成は右拳を振り上げ、左拳は腰元に下げた奇妙な構えで迎え撃たんとしている。

賀露「……」

俺は、格闘家じゃない。俺が闘ってきたのはもっと巨大(デカ)い連中……漁場を守る為、家族を守る為、どんな獲物だって倒してきた。

この腕と、この銛で!!

振り上げられた右腕が巨体から放たれサーパインの胸を貫いた。

【鯨葬(ゲイソウ)】

全力の一撃を受けてメギョオッと歪な音を立ててサーパンの胸は凹み大きく後ろへ吹き飛んでいく。

そのやりとりは本気の闘いそのもの。本来ならば当然であることなのだが、想定外のことに鎧塚実光は声を上げた。

実光「なッ!!?」

網代「……」

やるしかない!!八百長破りをした以上、俺達に退路はない!!優勝あるのみだ!!

心臓に打ちこまれた銛、死んでもおかしくない一撃だったが、サーパインは漁師に力を込めると踏みとどまったのだ。

賀露「……小僧…!」

サーパイン「……小僧じゃねえ。俺の名前は……鎧塚サーパインだァアアアアッッ!!」

今しがた胸を打たれたとは思えぬほどのスピードで飛び出して賀露の横っ面に拳を叩きこんだ。血を吹きだして上半身が背後に傾きかけたが巨体の賀露は倒れること無く巨拳を振り降ろし返したのだ。

着弾したのは顔面……だったが、サーパインは顔面に拳がめり込んでいるも不敵に笑っていた。顔の皮膚が裂けるのも我関せずというように懐に潜りこむとボディブローを叩きこむ。

賀露「ゴボッッ!」

重圧な肉体を貫き身体が「く」の字に曲がる強撃に賀露は血を吐きだす。

サーパインの流儀はムエタイに非ず。

【ミャンマーラウエイ】別名【ビルマ拳法】

千年以上の歴史を持つミャンマーの伝統武術。脊髄への打撃、首相撲からの投げ技が認められる等、ムエタイと共通技術が多い。

ムエタイとの特異点は、素手で試合を行うこと。そして……素手故(※)に、殆ど全ての攻撃を防がずに、攻め切る。

※:グローブ着用時より効果的なガードをすることが困難な為。

本来、人間は殴り合いに耐え得る設計になっていない。骨折など、日常茶飯事である。

だが……人体は強い。骨折を繰り返すたび、人体は「異常な環境」に適応すべく、骨の強度を上げていく。破壊と再生を繰り返した骨格はもはや、現生人類とは別種の生物のそれである。

人体を環境に適応させる武術。それが……【ラウェイ】!!

サーパインは人体の強度とスピードを兼ね合わせたラッシュを浴びせていく、賀露も手数は少ないもののカウンターを繰り出してくるが、勢いの差は歴然。そして後ろ回し蹴りが賀露の腹部を穿った。