ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:廊下ー

久秀「具合が悪いの?医務室に行く?」

悠「いや、問題ない。ちょっと夢見が悪かっ……」

口元に生暖かい液体が流れるのを感じた。手を添えると鮮血が垂れ落ちてたまっていく。鼻血だが、まるでコップをひっくり返したかのようにダラダラと流れ落ちていく。

久秀「鼻血が……って」

城「ちょ……!!その量はおかしいですよ!!内臓に損傷があるのかもしれません!!」

久秀「アンタ、やっぱり医務室にいった方がいいんじゃない?」

城「悠さん!!」

悠「……ハッ!大げさなんだよお前らはちょっと傷が開いたぐらいで。」

腕で血濡れ拭うと二人に背を向けて歩きだした。

久秀「ちょっと?」

悠「顔あらっってくる。先に戻ってていいぞ。そろそろ仕合が始まるだろ?」

城「……元気そうですね。」

久秀「……そうね。」

城「うん。あの様子なら心配なさそうですね。きっと体温が上がって傷が開いちゃったんですよ。」

久秀「……それならいいのだけれどね。」

廊下をしばらく歩き男子トイレを見つけると中に入って洗面台ではなく、個室の中へと入った。鼻血は止まっているが、体内(なか)から込み上がってきたものを便器へとぶちまけた。ビチャビチャと飛び散っていく血反吐が白い便器を赤に染めた。

悠「ゴフッ、ブボッゴフッ、ゴホッ、ハァハァハァハァハァ……ヒュー、ヒュー……」

口からだけではなく目からも鮮血が流れ落ちる。トイレットペーパーを乱暴にむしりと血にまみれた顔を拭った。

なんだこりゃ……わけがわからん。こんなこと、今まで一度もなかったのに……。まさか【鬼状態】の影響か……?

まぁ、関係ない、か……。死んでないってことはイケるってことだろ……。よく分からん桐生刹那(めんどくさい)のと加納アギトをブッ倒した後、休めばいい……。

血反吐と血染めのペーパーを流して、悠はトイレから出てよろよろと歩きだした。その背後で居たものの存在に気付かずに……。

「悠さん(あのひと)……もう駄目かもしれないですねえ。」

廊下の影で気配を殺し悠の行動を見ていたのは串田凛だった。



闘技場ではCブロックの仕合が始まろうとしていた。

鞘香「観客の皆さま!!お待たせしましたッッッ!!Cブロック開始イイイイイッッッ!!」

闘技場の中央でマイクを片手に叫ぶ鞘香、その周りに色んな美女たちが『Cブロック』と書かれたボードを掲げて観客たちに差し向けている。

大久保「いや~~たまりませんな紅氏♪」

紅「ああ、いいなぁ大久保氏。」

氷川「あ。俺、昨日。あのロングの子と連絡先交換したぜ。」

などと話している闘技者連中の後ろで久秀と城が戻ってきた。それに気づいた金田末吉がふたりに声をかける。

末吉「おや?お帰りなさい。松永社長もご一緒で」

久秀「あら?串田はどうしたの?」

末吉「飲み物を買いに行きましたよ~。それで、悠さんはいかがでした?」

久秀「ああ……それが……」

悠「おれがどうかしたか?」

ちょうどそこで小鳥遊悠も合流し声をかけた。

末吉「あ、お帰りなさい。着替えてたんですね。」

悠「ああ、寝汗をかいてな……お前誰だっけ?」

末吉「もう忘れたんですか!?ヒドイです!」

久秀「……(なんともなさそうね?)」
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