ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー夢:無意識空間ー

分かりやすい兆発ではあるがカーッと頭の芯が熱くなるのを感じた。普通ならばこんなものには乗りはしない。冷静に対処する。しかし……それを理解してなお、今は挑発に喰らいついていく。

気を引き締め、もう一度重心を前身に移動させる。自重に身を任せると頭から地面に落ちていく。完全に落下する寸前、鼻先が地面に触れようとするその一瞬に地面を踏み飛ばして前へと発進する。

【小鳥遊流・夏喜ノ型:火走り】

悠『ドッ、ラアァ!』

そして、敵へとぶつかる部分の筋肉を一点集中に絞めて固める。

【小鳥遊流・金剛ノ型:不壊】

移動特化の縮地と防御特化の不壊を併せて突撃型の技へと変貌させた小鳥遊悠による小鳥遊悠なりの技術(わざ)が弥一の胸を打った。

弥一『やれやれ…確かに夏喜は、四季流で一番速い攻めの型だ。だが…その動きは、きわめて直線的。故に、読みやすい。』

超スピードでぶつかりながら放った拳だったが着弾はせず手首を掴まれ止められてしまっていた。そして軽くひねられると手首、肘、肩の関節が捩じられていく。

悠『ッ~~!?』

弥一『【春野ノ型:漆草】。本来は筋肉で指関節を固定し、相手の急所を突く技だが…こんな風に使えば相手の骨を握り砕くこともできる。ガキの頃に教えてやっただろ?「応用できてこそ技だ」ってよお。お前は、大技ばかりを混ぜて頼りすぎなんだよ。』

因幡流の髪とも、腕力だけの押さえつけでもない指の力と関節の動きの制御だけで右腕を封じられ、徐々に浸食されていく。このままいけば右腕を捩じり折られることだろう。

悠『ニィッ』

しかし、小鳥遊悠は笑った。自由な左腕が消えた。次の瞬間、弥一の身体が重力を無視したように空を舞う。

【小鳥遊流・冬花ノ型:柳】

敵の体勢を崩し、そのまま投げ落とす。完全に決まったはずだったのだが捕えられた右腕からずるりと何かが絡みついてきてそのまま首を絞めつけられた。

腕ひしぎをしつつ首も絞める、亜流の十字固めの様な関節技。

【春野ノ型・双魚之縛】

弥一『ヒュー!今のはちょっとヤバかったぜ。けどな、【柳】はあくまで崩し技だ。過信は禁物だぜ~?』

悠『ぐうぅっ……!』

今のさっきは腕のみだったが、今は腕と首、状況は一転するどころか悪化してしまっていた。

弥一『俺がいうことじゃあねぇがよぉー。四季流の本質は四大系統を収めてこその技術だ。夏と冬に頼りすぎなんだよ。』

【四季流】それは十神将のうち、春野、夏喜、秋宵月、冬花の四つの武術の総称。本来の十神将の役目は小鳥遊弥一と拮抗するための武術集団たが、その役割は内と外に分かれる。

まずは外、九頭竜、百目鬼、天馬、猿渡、鳥居、駒狸の六の神将による円の外部からの関わりを隔絶する結界。

そして内、春野、夏喜、秋宵月、冬花による菱形の中心に潜む怪物(弥一)を抑え込む封印。

春野ノ型:肉体軟化、関節技

夏喜ノ型:歩法、走法

秋宵月ノ型:身体及び力の流れの操作

冬花ノ型:自身の力と敵の力を利用した投げ技

小鳥遊悠は四季流のうち比較的に使いやすく応用の効く夏喜と徹底的に仕込まれた冬花に肉体硬化と攻防一体の金剛ノ型を混ぜ合わせてたstyleで現状は勝ち進んでいた。
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