ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:医務室ー

ユリウス・ラインホルトに足を砕かれ医務室へ運ばれた【暗黒鳥】沢田慶三郎(一回戦敗退)は治療を終え意識を取り戻した頃、ひとりの男が訪ねていた。

慶三郎「……何よアンタ?仕合前に、嘲笑いに来たって訳?」

ベッドの前に立っているのはSH冷凍の社長兼闘技者である紅だ。

紅「…沢田、誰にやられた?」

好子「あ……やったのは…」

付き添いのM・ミュージック社長、戸川好子が口を開きかけたが、腕を伸ばして慶三郎が制した。

慶三郎「……何よ?敵討ちでもしてくれるのかしら?」

好子「沢田…?」

慶三郎「舐めんじゃないわよクソボケ。同情なんて侮辱と同じよ。私たち闘技者は結果が全て!一般人の、ベタベタした慣れ合いなんて必要ないのよ!!好子!アンタも責任なんて感じるんじゃないわよ!私は、自分の意思で闘ったんだから。」

好子「沢田……」

慶三郎「見てらっしゃい。身体が治ったら、あいつらにリベンジするわよ!」

あくまでも自分の意思と言い切る沢田、紅はギリっと歯を食いしばると突如慶三郎の胸ぐらを掴んだ。

「「!!」」

紅「沢田……あとは任せろ!!俺が、必ず優勝してやる!!お前の無念は、俺が晴らしてやる!!」

ボカンとする沢田慶三郎は思った。

……いやいやいやアタシの話聞いてた?敵討ちとかは余計なお世話なんだって……そもそも優勝と敵討ちは関係ないでしょ……この子馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど…………でもまあ……東電の連中よりはずっとマシかもね…。

慶三郎「はあ……ちょっとアンタ!怪我人に乱暴するんじゃないわよ!!」

紅「おう、悪い悪い!」

心美「わあー…青春ですね、先生。」

英「フフフ…医務室も賑やかになってきたね。」


絶命闘技会ドーム内の廊下を二人の少女が歩いている。ひとりはピンク地にフリルをあしらたドレスのエレナ・ロビンソン。もう一人は黒いセーラー服の魏一族、魏迦楼羅。

エレナ「カルラちゃん、付き合ってくれてありがとう。」

迦楼羅「気にするなエレナ。私たち、友達だろ?」

エレナ「…ごめんね、色々迷惑かけちゃって。後は私たちだけで大丈夫だから、カルラちゃんは仕合を観てきて。」

迦楼羅「ううん、エレナと一緒に居る。医務室に戻る前に、英(はなふさ)と心美に食べ物を持っていこう。」

エレナ「カルラちゃん…ありがとう!そういえばお昼、過ぎちゃったもんね。きゃっ!ああっ、ご、ごめんなさい!!大丈夫ですか!?」

話ながら歩いているとエレナは誰かにぶつかってしまった。

「……ケガはしてない?気をつけてね。」

エレナ「は、はい!」

背が高く髪の長い男はそういってエレナの頭を軽く撫でると歩いていく。すると、カルラの横を抜ける瞬間……。

「……憧れに留めておくなら咎めない。」

迦楼羅「!!」

エレナ「ねえねえカルラちゃん。今の人、すごい綺麗だったね。」

そうヒソヒソと話しかけてくるエレナだったがカルラは通りすぎていった者を目で追っていた。

……なんだアイツ?あんな奴初めてだ……!アイツ……ホントに生きてるのか?

うっすらと笑みを浮かべて歩いていく皇桜学園グループ代表闘技者、桐生刹那は小さく呟きながら進んでいく。

刹那「小鳥遊悠は誰にも渡さない。「彼」僕のものだ。」

小鳥遊悠は誰にも渡さない。「彼」僕のものだ。小鳥遊悠は誰にも渡さない。「彼」僕のものだ。小鳥遊悠は誰にも渡さない。「彼」僕のものだ。小鳥遊悠は誰にも渡さない。「彼」僕のものだ。小鳥遊悠は誰にも渡さない。「彼」僕のものだ……。
94/100ページ
スキ