ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

プロレスラーVS相撲取り、というメジャーパワーカード同士の闘いが決着した。金剛は率直な感想を口にした。

金剛「鬼王山の古代相撲……確かに恐るべき技術だが…覚悟の差が勝敗を分けたな。プロレスに全てを捧げた男と相撲を見限った男。積み重ねてきたものの重さが、結果に繋がった。」

摩耶「うん、相撲がプロレスに負けたんじゃないね。関林さんの維持と誇りが、鬼王山の技を上回ったんだ。」

鬼王山側選手登場口廊下では、負けたにもかかわらず禍谷園社長の禍谷重蔵は大笑いをし始めた。

重蔵「ヌハッハハハハハッ!!いやあ負けた負けた!負けたもんは仕方がない!行くぞ城!」

先ほどまでのぼんやりとした表情から一転、真剣な顔つきで蘭が重蔵の背中に声をかけた。

蘭「…………社長、もしかして。最初からこれが狙いだったんですか?」

重蔵「……さあ、どうだったかの?」

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龍王山『社長。お願いでごわす。鬼王山は将来各界を背負う逸材でごわす。』

虎王山『だが、今のアイツは驕りに支配されている。どうか天狗の鼻をへし折っていただきたい。』

龍王山『相撲の未来のために、…何より尊の兄としてお頼み申す。』

~~

ガキの頃から面倒を見ると彼奴からの頼み。無下にするわけにはいかんじゃろ。尊の詰めの甘さでは、優勝はできんと踏んでおったが…またお主にやられたのお…ガンダイ。

これで貴様への借りは額の傷と合わせて二つになった。この敗北は尊の大きな糧となるじゃろうて……この借りはいずれな。


仕合を終えた関林ジュンは余裕を残しつつ退場をした。……が、廊下を少し進んだ先で腹部を押さえ蹲りゲボッゲボッと咳と同時に血反吐を吐いた。

関林「ゼヒュー…ゼヒュー…効いたぜ……」

「あ……あの……」

突然背後から声をかけられて振り返るとそこには【破壊者】河野春男が立っていた。

関林「ハァハァ……なんだ、お前か。ハァハァ、まずいところを見られたな。いいか…誰にも言うなよ…プロってのは舞台裏を見せねぇもんなんだ。」

春男「…………か……変われるでしょうか……?」

関林「あ?」

春男「お……俺、クズなんです……皆の期待を裏切って…堕ちるトコまで堕ちて……こんな俺でも…変われるでしょうか!?」

顔中をぐしゃぐしゃにして河野春男は関林にプロレスラーに訴える。それを見て関林はニッと笑った。

関林「……ああ。変われるさ!お前もきっと変われる!だからいつまでも泣いてんじゃねえ!!」

春男「はあ゛…はぁ゛い!!!」

関林ジュン二回戦進出

並びに河野春男、関林ジュンに弟子入り決定。



絶命闘技会ドーム内の某所にて、顔の右上から中央辺りまでにかけて傷のある大柄の老人が跪いて口を開いた。

「殿…万事、整いましてございます……。」

暗い一室で豪奢な椅子に腰かけている顔の整った若者、白夜新聞代表闘技者の二階堂蓮が口を開く。

蓮「うむ。ご苦労だったな、蔡(ツァイ)。時は満ちた。今こそ、餓狼の牙を血に染めようぞ。」
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