ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

鬼王山「とっととくたばれジジイ!」

力任せに突っ張りを仕掛ける鬼王山だったが、目に見えて落ちてきたスピード、関林は側面へと回りこみ相撲取りの太い首に腕を回して締め上げた。

ジェリー『Headlock!!』

肉と肉が擦れ、締まり、鬼王山の表情が苦悶に歪んだ。しかし、両手で関林の身体を力いっぱい前へと押し込んだ。ヘッドロックの拘束からズボッと頭が抜けて後ろに飛び下がる。

鞘香『外れたアアァァァ!』

ジェリー『What!いつもの関林ならESCAPEはIMPOSSIBLEなはずデース!!!』

鞘香『関林選手さすがにダメージが蓄積されている様子!だが、その表情は以前、満面の笑み!!』

鬼王山「ッッ!!」

こ、コイツッ!!いつになったら、倒れるんだ!!??

関林「…不思議かい?」

鬼王山「!?」

関林「何で俺が倒れないと思う?」

鬼王山「…試合中にペラペラしゃべんじゃねえッ。」

ガンダイ社長、鹿野玄は小さく首を振る。

鹿野「(いや。話術(アレ)もプロレスの一部だ。)」

関林「……芯がねえんだよ。お前、相撲を愛してないんだろ?」

鬼王山「…………あ?」

関林「クククッ図星だろ?なにが「本当の相撲」だ。どんなもんかと思ってみりゃあ総合格闘技の真似事じゃねえか。笑わせるんじゃねぇよ。」

鬼王山「……」

関林「そもそも横綱(てっぺん)を獲ってねぇお前如きに、相撲を否定する権利はねえんだよ!!」

そのひと言が引き金だった。鬼王山は完全にブチ切れて。

鬼王山「誰に口にきいてんだテメエェェェ!!」

怒声を上げて関林に向かって走り出した。顔を両手で引っ掴むと引っ張りこみながら頭突きを見舞う。一発、二発、三発……何度も何度も頭を関林の顔面に落とし続けた。

選手登場口廊下から見ていた禍谷園秘書の城蘭がいった。

蘭「攻め方が雑になった。」

まずいわね…一方的に攻めているのは尊君の方だけど、精神的に追い詰められている。

重蔵「……」

蘭「尊君、落ち着……」

冷静を取り戻すように声をかけようとした蘭だが禍谷園社長、禍谷重蔵の大きな手が伸びて、それを制した。

蘭「社長……?」

闘技場では大きく頭を振りぬくと関林の上半身が後ろに下がる、そこに追い打ちとばかりに拳を叩きこもうとする。しかし、関林はその振り上がった腕に自分の腕を引っかけると鬼王山を掬いあげて投げ落とした。

「出たッ!アームホイップ!!」

「関林が流れを引き戻した!!」

関林「さて、頃合いだな。起きろよ小僧。時間いっぱいだぜ。」

鬼王山「ああ……そうだな。いい加減終わらせようぜ。」

投げ倒されていた鬼王山は身体を起こすと至って冷静に身体についた汚れを払い落とした。

関林「……」

違う。冷静になったわけじゃねぇ。むしろ、逆!このガキ、怒りを通り越して、殺意を抱いてやがる!

鬼王山「……ウンザリだぜ八百長野郎…倒れねえなら、殺すしかねぇぞ?」

関林「ククッ!言うじゃねぇか。やってみろや三下…!?」

鬼王山は普通の相撲取りがとる構えから更に低く身体を落とした。

鬼王山「全ての攻撃を受けきるんだろ?プロレスラー。」

刹那……鬼王山の姿は、闘技場から消えた。