ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

関林「ッッ~~!」

膝がイッたか!!……それがどうした?

骨が折れようが肉が裂けようが、知ったことかよ!!

鬼王山「ハァッハァハァッハァッ」

相撲の兄ちゃん、息が上がってるぜ?

当然だよなぁ?ただでさえ力士は短期決着に特化した肉体。本来の相撲の動きは肉体に合わせた必要最低限の負荷で立ち回れるよう改良されてんだ。

「テメーの相撲」とやらと力士の肉体の相性は最悪。スタミナの消費は、より一層激しくなる。

次は肉体改造でもしてみるか?減量?持久トレーニング?……それは、本当に相撲なのか?

くだらねえッ!

関林「シャアアアアッ!!」

攻撃の頻度が落ちてきた鬼王山に関林は逆水平を仕掛けた。

鬼王山「チィィッ!クソが!」

負けじとやり返す相撲取り。拳を顔面にぶつけ、続けざまに突っ張りのラッシュを浴びせかける。関林は当然のようにガードせず受け止めるも、僅かにスピードが落ちてきた鬼王山の腕を掴み取った。

関林「よお、相撲の兄ちゃん。力士が相撲を信じなくてどうするんだよ?」

鬼王山「!?」

顔中の至る所が裂け朱に染まった関林は頭を振て鬼王山の顔面に頭突きをぶつけた。

関林「なァおいっ!?小僧、よく似てるぜ。」

お前は、俺だ。

真のプロレスラーになる前の、あの頃の俺だ……。

あれは4年?5年…?いや、もっと前だたかな…。

ある空手団体が、大規模なトーナメントを開催した。禁止技は目突きのみ。他は何してもOKてイカレた大会だった。

当時はバーリトゥード全盛期だったからなァ…色んな奴が出場してたよ。他流の空手家、ボクサー、ムエタイ、砲林寺拳法、喧嘩屋に元力士……自称忍者なんて奴もいたっけ……そんな大会に、一人のプロレスラーが参戦した。

当時、超日本プロレスのトップレスラーだった人。

蔵地駆吾(くらちかるご)、俺が新弟子の頃から扱かれてきた大先輩だ。

蔵地『ジュン!セコンドは任せたぞ!』

関林『ウスッ!』

圧巻だった。

一回戦、二回戦を蔵地さんはプロレス技だけで勝ち抜いたんだ。

当時の俺は、30代前半、プロレスラーとしてようやく中堅に差し掛かるって頃だった。俺の中で、確信が生まれた。

「やっぱりプロレスは最強だ」って……だけどよォ……あの時の俺は何も分かっちゃいなかたんだ……。

対戦相手は、大会屈指のハードパンチャー。にもかかわらず……蔵地さんは最後まで、ガードをしなかった。

そして、蔵地さんは負けた……。

関林『何でだよ、蔵地さん!?勝てない相手じゃなかっただろ!?相手の技のガードして居れば!!答えてくださいよッ!!何でわざと負けたんすか!!!』

蔵地『……わざと負けた?それは違うぞジュン。プロレスにガードはない。だから、相手の技を受けきったまでさ…』

関林『だ…だけど、これはプロレスじゃねーんすよ!??アンタだけプロレス縛りをする必要なんてなかったんだ!!』

蔵地『…………ジュン。プロレスラーがプロレスを信じなくてどうすんだ?』

たった一言だった。「プロレスを信じろ」たたひと言で十分だった。あの人は、教えてくれたんだ。「真のプロレスラーの在り方」ってやつを。
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