ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

途轍もない張り手のラッシュを繰り出していた鬼王山の動きが遂に止まった。

鬼王山「はぁっはぁっ……はぁっはぁっ!」

鞘香『こっ……これはっ……た…耐えきったァーーーーっ!!男・関林ジュン!!鬼王山の張り手豪風雨を、ガードすること無く受けきったアアアアッッッ!!』

肩を揺らして荒い呼吸を繰り返しているものの関林ジュンは踏ん張ったまま胸を張っていた。

関林「よお、小僧。攻撃は終わりか?」

鬼王山「……舐めんなよテメー!何でガードしねぇ!?コケにしてんのかゴラァッ!?」

怒りの抗議に関林は笑って答えた。

関林「おいおい、勘違いすんなよ。」

鬼王山「オラァッ!」

顔面に張り手を浴びせかける。しかし、これもガードせず着弾した掌を顔の力だけで押し返そうとする。

関林「これが「俺のプロレス」だ。」

今度はとばかりに鬼王山の顔面に拳を落とした。

「おお!関林が盛り返した!」
「いけるよ関林!」
「素敵!」
「ジューン、頑張ってーー!!」

鞘香『こ、これは一体!?』

ジェリー『JESUS!』

関林にいわれて仕合を見ていた一回戦敗退の河野春男も会場の変化に混乱する。

春男「な、何だァッッ!?」

「せっきばやし!!」
「せっきばやし!!」
「せっきばやし!!」

「「「ワァアアアアアぁァッ!!」」」

鞘香『場内に関林コールが鳴り響いています!!』

ジェリー『関林のGUTSが客のHEARTをCATCHしたのデース!』

鬼王山「糞がアアアッ!」

撃ち返されだした鬼王山は関林に頭からぶつかり掴みあげようと胸を締め上げた。

しかし、動かない!!

関林「おいおい、わかってねぇな小僧。今は俺の番だろ?見せてやるよ。プロレスラーの神髄をなッッッ!!」

反撃タイムとばかりに両腕を振り上げる関林だったが、次の瞬間スパアァァァンッと鋭い音が響いた。

「「「…………」」」

関林コールが静止する。観客だけでなく観戦している闘技者たちも驚きの表情に変わった。

鬼王山「……マジでムカついてるぜ。テメーみてえな八百長野郎に、使うことになるとはな。「俺の相撲」をよォ。」

百戦錬磨、どれだけの攻撃の雨を受けてもビクともしなかった関林ジュンが、膝を突き、そのまま前に倒れ落ちたのだ。

鞘香『なッ!!なっななななななんということだアアアアアアアアアアッッッ!!関林選手、あと一歩のところで、痛恨のダウウウウウウウウウウウウウウンッッッッ!!し……しかし!恐るべきは鬼王山選手!!まさか……まさかあんな技を繰り出すとは!!あまりの衝撃に観客席も動揺を隠せません!!』

皇桜学園秘書の松田智子が小さく声を漏らした。

智子「い……いいの…これ?お相撲さんがキックしちゃった。」

古代……一つの闘いが行われた。

一方は、野見宿禰(のみのすくね)。

対するは、当麻蹴速(たいまのけはや)。

日本書紀にも記される、最古の角力(すもう)死合である。

決着は、蹴り。蹴速の腰骨を踏み砕いた宿禰に軍配が上がった。

現在の相撲が確立される以前、「相撲」が「角力」だった頃……打投極絞その他禁じ手一切なしの武術だったと聞く。
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