ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

仕合開始の合図も仕切り直しもない。プロレスラーと相撲取りの二雄の闘いはそのまま始まってしまった。

鬼王山の張り手が胸を顔をぶち抜いていく。

苦節苦難、超過剰なトレーニングを続けてきたプロレスラーの中のプロレスラー関林ジュンが今、圧倒されていた。

関林「ッ……!」

重いッ!!この小僧…半端じゃねえッッ!!

鬼のような張り手を受け仰け反りかける関林の胸元に鬼王山の頭がめり込んだ。そしてそのまま関林の身体をものともせずに前へ前へと突き進んでいく。

一年365日、朝から晩まで四股を踏んで鍛えた足腰。足腰の強さで、相撲の右に出る格闘技は、皆無。

鬼王山「うっるあぁぁぁっ!」

遂に闘技場の端まで追いやられ激突する。

鞘香『壁際まで押されてァーーーッッ!!』

関林「このガキャア……!調子こいてんじゃねえッッ!!」

今だ胸に頭を差し込んでいる鬼王山を上から抱き捕えて持ち上げようとした。

しかし……動かない。

この感覚はまるで、大地そのものを引き抜こうとしたかのような……。

瞬間、相撲取りは突っ張りでホールドを引き千切り、プロレスラーの顔面に張り手をぶちこんだ。真っ正面から巨大な掌が顔を打ち、その衝撃は背後の壁が砕けるほどの一撃。

【鉄砲】

鉄砲柱(木柱)に張り手を繰り返し行う鍛錬。打撃を得手とする力士は、僅か数発の張り手で柱をへし折るほどの威力を持つ。

鬼王山「ふうぅぅっん!!」

鉄砲柱をへし折る俺の張り手……八百長野郎に耐えられるかよ!!

鞘香『ああァーー!!張り手の連打だアァー!!』

張り手を浴びて壁に打ち付けられては跳ね返り、また張り手を受ける。

関林「シャアアッ!」

怒涛の張り手速射砲を受ける中、関林は腕を振るった。巨漢のレスラーを昏倒させる関林の【逆水平チョップ】。

鬼王山には通じない。止まること無くカウンターの張り手が関林の顔面に入った。脳が揺れたのか関林から力みがなくなる。そこに追い打ちとばかりに、更に張り手が放たれる。


お前らは所詮、ショーをするために鍛えているだけ。俺達は違う。勝つために鍛えてるんだ。純粋に強くなる為だけに鍛えてきた力士が、八百長野郎に負けるはずがねぇ!!俺とお前じゃあ全てが違うんだよッッッ!

鞘香『ああーー!!関林、意識がトンだかーー!?』

鬼王山「首から上フッ飛ばしてやるよ!!」

トドメ目の一撃、渾身の力を込めた張り手が打ち付けられた。ドゴォォッという破壊音、相撲取りの巨大な掌が壁にめり込んでいる。

そこにプロレスラーの姿はない、突然のことにさすがの鬼王山も混乱した。

金剛「それでいい。」

摩耶「え?」

鬼王山に影が差す。ハッと上を向くと意識が飛んで棒立ち状態だったプロレスラーが降ってきているのだ。

鞘香『跳んだァァァ!!』

関林「馬鹿がッ!!」

【演技】はプロレスラーの十八番なんだよッッ!そして、コレ。「面」で闘ってる相撲には初体験だろ?殴ったり蹴ったりだけがプロレスじゃねぇんだ。

プロレスってのはな……「三次元の闘い」なんだよッ!!

関林ジュンの全身全体を使ったボディプレスが鬼王山に直撃し、大地へと叩きつけたのだ。

一拍の間、プロレスラーの身体の下から張り手が伸びる。

関林は弾けるように飛び下がり、鬼王山は飛び立ちあがる。

鬼王山「効かねえんだよクズが!死にてえかオッサン!」

そういって口の端からこぼれる血を舐めとるとペッと吐きだす。

関林「……ハッ!そうこなくっちゃなァ。」

「う…ウオ…」

「「「「ウオオオオオオオッ!!」」」」

相撲対プロレス!両雄、譲らず!!
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