ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

絶命闘技会ドーム:闘技場ー

大銀杏(おおいちょう)、力士の中でも関取(十両以上)しか結うことを許されぬ髪形。

重蔵「(これほどわかりやすい兆発もそうそう在るまいて。…やってくれたのおガンダイ。闘技者時代、一度もワシに勝てんかったお主がのう…まさか、闘技会員としても争うことになるとはのう…)」

対戦相手会社ガンダイの社長、鹿野玄は葉巻を加え鋭い視線で関林ジュンの背中を見ていた。

鹿野「……」

私は…凡百の闘技者だった。

禍谷重蔵は、あの時代を代表する闘技者だった。私はいつも、奴の後塵を拝してきた。だが、関林は私と違う。【滅堂の牙】加納アギトにも決して引けを取らぬ最高クラスの闘技者。

私は、お前がどこまで翔べるのか見届けたいんだ、関林。

並び立つ相撲取りとプロレスラー。片方はこるからに怒りの形相を、もう片方は舌をだして挑発的に唸っている。

鬼王山「(糞虫が…ぶっ殺す。)」

関林「(クック…!キレてんなあオイ。この程度でキレるなんざあ、プロの自覚が足りねえぜ。)」

忘れるなよ?俺達は、闘技者である前に、エンタティナーなんだぜ。

レフリーがふたりの間に立つと叫んだ。

レフリー田城「よし!両者開始位置について!」

関林が振り返り開始位置につこうとしたその時ガッと頭を掴まれた。

鬼王山「目障りなんだよ。」

関林「!?」

レフリーが止めに入る間もなく鬼王山は引っ掴んだ関林の頭を片腕で引っ張り上げて後頭部から床に叩きつけた。

鬼王山「フンッあっけねぇ。八百長やろうが調子こくんじゃねぇよ。」

突然の凶行に観客たちはどよめき、レフリーが慌てて近づいた。

レフリー田城「関林!」

鞘香『なっ!?なんということだー!仕合開始を待たず、鬼王山が仕掛けていったアーーーー!!』

立見席で金剛の肩に座って頭に肘を突きながら摩耶がいった。

摩耶「無防備からの叩きつけ、今のはエグイねぇ。」

金剛「しかも後頭部からいかれたな。」

闘技会の会長片原滅堂は一連の様子を見て愉快そうに笑った。

滅堂「ホッホッホッ!「常在戦場」隙を見せる方が悪いんじゃ。」

魏一族の長、魏絵利央もうなずいた。

絵利央「左様。」

地面が砕けるほどの威力で投げ倒された関林はいまだ動かない。

レフリー田城「おい!やれるかおいッッ!?」

鬼王山「(くだらねえ…こんな奴が闘技者でも五指の猛者かよ。)」

終わったと振り返った瞬間、背後で何かが動く気配と共に腕もろとも胴体をホールドされた。

関林「ちょっと痛ぇぞ小僧。」

鬼王山「テッ…!?テメエッッ!!」

不敵な笑みを浮かべプロレスラーは相撲取りに【ジャーマンスープレックス】を仕掛けた。巨体が180度舞って頭から床へ投げ落とした。その後、足先の力だけで関林は立ち戻る。

関林「覚えときな坊主。プロレスラーは演技が上手いんだよ。ダアアアアアアッ!」

「「「「ウオオオオォぉッ」」」」

拳を突き上げて叫ぶ関林に観客たちもコールを返すが、レフリー田城は次から次に起こる事態にてんてこ舞いだ。

レフリー田城「鬼王山!」

倒れた力士に近づくよりも先に鬼王山は飛び起きてロケットのように飛び出した。頭から関林にぶつかっていく。

関林「!?」

力士の頭突きが顔に直撃し、関林は顔を抑えた。

鬼王山「ツメが甘えんだよバーカ。何で追撃しない?何で一撃で決めたと油断した?八百長野郎の分際でよォ。……お前勘違いしてねぇか?「打たれ強さはプロレスラーの特権」ってよぉ。覚えときなオッサン。力士はプロレスラーより頑丈なんだよ。」

関林「ククク……盛り上げるじゃねえか!お前、プロレスラーに向いてるぜ。」
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