ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:廊下ー

ズシン、ズシンと一歩ごとに振動が起きる超巨体の男が巨大なリュックを背負いソフトクリーム片手にボロボロと涙を流しながら歩いていた。

それはNENTENDOの河野春男だ。

春男「う゛う゛う゛…う゛う゛う゛ぅ゛……俺は……どうすればいいんだ……」

仕合に敗北し意識を取り戻したの束の間雇い主だった河野秋夫に……。

河野『このゴミ豚ァッ!!仕合に勝てないお前なんぞただのゲームキ○○○なんだよ!二度と顔見せるな!!』

情もなにもなく一方的に切り捨てられてしまったのだ。

俺はもうヒマラヤ最強の男じゃない。欲に溺れたゴミ豚なんだ……。今さら村にも帰れない……。俺みたいな浅ましい豚野郎は……どこにも必要ないんだ……。

自暴自棄になりながら歩いていると廊下の角で春男は誰かにぶつかってしまった。ドサッと弾きかえった。

「あん?」

春男「!?」

自分の半分の大きさしかない人間にぶつかって尻餅をつかされた。

「おう、悪りぃな兄ちゃん。怪我ァなかったか?」

さらにぶつかった相手は春男の手をつかむと引っ張り上げたのだ。

春男「!?」

た、立たされた!??300キロ超えの俺が何だコイツは!!?

「何だ兄ちゃん。もう帰るのかい?次の仕合は面白れぇぞ?帰るのは観てからにしな。」

春男「あ……アンタ一体…」

「…名乗るほどのもんじゃねぇさ。通りすがりのプロレスラーだよ。」


闘技場に鬼王山が登場し、観客たちは大盛り上がりで声を張り上げている中、立見席で【皇帝】のアダム・ダッドリーはいぶかしげに尋ねた。

アダム「HEY旦那。あのSUMOーWRESTLER(スモーレスラー)は強えのかい?」

西品治警備保障社長の西品治明はうなづいた。

西品治「もちろん。荒くれ者で有名な力士だよ。」

摩耶「あっ!」

二人が話している横で摩耶が近づいてくる男に気が付いて駆け出した。それは小鳥遊製薬代表選手、金剛だ。

金剛「なんだお前ら。早速仲良くなったのか。」

摩耶「やったね!一緒に二回戦進出だっ!」

ダッシュで飛びつくと金剛は小動物か何かでも拾い上げるように片腕で摩耶を掬うと、そのまま肩に乗せた。

金剛「西品治社長、一回戦突破おめでとうございます。」

西品治「金剛さんこそお疲れ様です。小鳥遊さんにもよろしく伝えといてください。」

アダム「……」

金剛を直視したアダムは背中に冷たい汗がこぼれた。この男、底が見えねぇ……っ!

摩耶「やっぱり、ここに座ると落ち着くなぁ。」

金剛「俺は椅子じゃないんだかな……いや、まぁ、いいんだが。それより仕合始まるぞ。」

摩耶「ようやく関さんの登場かな。」

金剛「ああ(見せてもらうぞ、関。プロレスラーの矜持……。)」

鞘香「選手入場ッッ!!プロレスVS相撲!何かと比較される二つの競技が雌雄を決す時が来た!!プロレス界代表は、地獄から来た破壊の天使!「顔じゃないよ」とばかりに悠々の後攻入場だァァッ!!身長196センチ!体重141キロ!闘技仕合戦績57勝1敗!5551億1125万円!ガンダイ!関林ジュンンンンンンンッ!……えっ!?」

「「「「!?」」」」

鬼王山「っ~~(こ……ッッッこの糞がアアアアアアッッ)!!」

登場した関林ジュンの頭に皆の注目が集まった。自慢のドレッドヘアが大銀杏になっているのだ。

鞘香『なんとなんと関林選手、掟破りの逆大銀杏ッッッ!!プロレスが相撲に真っ向から喧嘩を売ったアアアア!!』

関林「はぁーっん!!」

【獄天使】関林ジュン
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