ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

眼球、そして三半規管に重大なダメージを負った目黒。凍夜は指を引き抜きながら言った。

凍夜「一度だけ聞くよ。俺が受けた依頼は「優勝」、「抹殺」じゃあない。降伏してくれないかな?」

左目左耳から流れ落ちる血液。もはや戦闘続行は不可能だ。

東洋電力の業かな控室で白夜新聞代表闘技者の二階堂蓮はモニターを見て吐き捨てるようにいった。

蓮「馬鹿が!油断して致命傷を負うとは…アイツはもうダメだな。」

速水「フフ…二階堂、お前は見たことがなかったな。まあ、見ていろ。ここからが面白いぞ。」

目黒「ハァアアアアア!!」

大口を開けて笑うように目黒が叫び声をあげた。緩んでいた両手に再び力が入る。

凍夜「ごっ…!??」

力が増した!?馬鹿なッ!!コイツ…痛みを感じないのか!?…いや違う!これはまさか……!

目黒「あはぁ♪痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

至るとこから血を流し大口を開けて笑いながらブツブツと同じ言葉を連呼し続ける。

凍夜「ぐっ……!」

怪物(フリークス)!!

鞘香『こ…これは一体どういう闘いなんだーーーー!?圧倒的にダメージを受けている目黒選手が、終始凍夜選手を攻め続けているー!!!この仕合の終末は、果たしてどうなるのか!!?我々には全く想像できません!』

目黒「……あ、そうだ。お父さんが言ってたっけ……?」

凍夜の首を掴んでいる両手から右手が離れた。

凍夜「!?」

目黒「目には目を……片目には両目を。」

吊り上がった手が不気味に開き凍夜の顔に落ちると、ひとさし指と薬指が目に突き刺さる。

鞘香『え……抉ったアアア!!目黒選手、凍夜選手の両の目を何の躊躇もなく穿ちましたッッ!!この男に人の心は無いのか!!?』

目黒「ハァァ♪」

凍夜の目から指を引き抜くとそのまま腕を振りあげて血濡れた手を握って拳に変えた。ボゴッボゴと筋肉が膨らんでいく。

鞘香『ああッーー!?目黒選手、再度拳を振り上げたァーーッッ!?』

目黒「…行くよ。」

グチャッ!

拳が振り降りる前に何かが潰れる音。目黒の下半身の股間部分を凍夜が握りつぶしたのだ。

目黒「ぎっ……ギィアアアアアアアッッ!!」

目を潰され、耳を穿たれても動かなかった目黒が悲鳴を上げて凍夜の身体から転げ退いた。

鞘香『こッッッ~~~~睾丸だアアアアッッ!!凍夜選手、目黒選手の金的へ非情の一撃!!』

ジェリー『サヤカSUN……少シ抑エテ…レディナンデスカラ……。』

鞘香『流石の目黒選手もこれは堪えたようです!で、ですがこれは……』

ジェリー『Yes…状況(シチュエーション)は以前、凍夜選手の圧倒的不利デース。』

目黒「フーッフーッ!」

のたうったのも数秒、怪物は立ち上がると再び獲物へと向かい始める。

出血する両目を押さえてなんとか立ちあがった凍夜だが……。

凍夜「ッ…」

わけがわからない。コイツ…不死身か…!?

同刻、モニターから試合の様子を見て凍夜と同じような疑問を持った二階堂に速水が答えていた。

蓮「多幸感?」

速水「左様。エンドルフィンやドーパミンといった脳内麻薬物質がもたらす効用のひとつ。つまるところ多幸感とは、「脳が生み出す快感」。あの女(東郷とまり)が飼っている闘技者に脳内麻薬物質を操り、痛覚を遮断する拳法家がいたが……目黒の能力はそれとは真逆の代物。目黒は、「痛み」に比例して脳内麻薬の分泌が上昇する特異体質。すなわち「全てのダメージは快楽に転化される」。」

……まあ、私が少々手を加えているがな。
77/100ページ
スキ