ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:若桜生命控室ー

阿古屋「父・目黒広樹を殺害後、正樹は失踪。警視庁は即座に目黒正樹を全国指名手配した。だが、奴の消息は20年もの間、一向に掴めなかった。これが、俺の知る「少年M」こと目黒正樹の全てだ。」

若桜生命社長の檜山瞬花は急須で自分と清秋の分のお茶を注ぎながら返事をした。

瞬花「そうか…犯行当時、目黒は13歳。少年法との兼ね合いで公開捜査に踏み切れなかったんだね。」

阿古屋「それもある。だが……この事件は不可解な点が多い。」

13歳の少年が警察の目を掻い潜り、20年もの間、潜伏生活を行うなどまず不可能。

瞬花「まさか…」

阿古屋「うむ。目黒には協力者がいる。そいつこそが、今大会に目黒を招聘した黒幕だ。」


東洋電力会長の速水勝正はモニターを眺めご機嫌な様子で笑みを浮かべた。

速水「あれから20年……」

あの時の獣が、良い「駒」に育ってくれた。

正樹、好きなだけ殺りなさい。ひとり残らず殺してしまえ!

鞘香「それでは、闘技者入場ッ!その素性、不明!戦闘style、不明!謎だらけの怪人が闘技試合初参戦!!果たして本日謎は明かされるのかーーーーっ!?身長195センチ!体重130キロ!!闘技仕合初参戦!海一証券、目黒正樹イイイイイイッッ!!……お!?」

凍夜「?」

鞘香「こ、これは一体!?」

目黒「ハアァァ~」

ひょこひょことした歩みで登場してきた目黒正樹は獣じみた荒い呼吸にドロドロと瞳から血を流している。

鞘香「け、血涙です!!目黒選手、血の涙を流しての入場だアアアア!!」

目黒「ハアァァ、ハハァ」

見ててねお父さん…お父さんより上手に、殺して見せるからね…

【泣き男】目黒正樹

凍夜「……人間だよね?」

対面する目黒は大きく口を開きだらりと長い舌を垂らした。

目黒「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」

凍夜「いやいや……ちょっと、えぇ……。」

登場した目黒の様子をモニターで眺めている勝正は笑いをこぼした。

速水「フフ…既に「泣いて」いたのか。決着つくまで長くはかかるまい。」

同時刻、医務室ではペナソニック社長の瓜田数寄造がある程度回復を終えて意識を取り戻した因幡良と目黒について話していた。

瓜田「人殺し?君と同じ暗殺者ってことかい?」

因幡「一緒にするない!暗殺者ってのはビジネスなのっ無駄な殺しはしないの!アイツみたいなのは快楽殺人者(シリアルキラー)っていうのっ!」

小鳥遊製薬控室では汗を流して着替え終わった金剛と柏がモニターを見ながら話しあってっていた。

金剛「どっちが勝つと思う?」

柏「……この勝負、不利なのは目黒の方だ。金貸しはノーギ(ここでは上半身裸の意)だ。柔術家の目黒には厳しい闘いになるだろう。」

こんな話がある。ある大学で、柔道部とレスリング部の対抗戦が行われた。道着着用ルールの仕合では柔道側の全勝。

しかし……ノーギルールでは一転、レスリングに全敗を喫した。

柔道家にとって、着衣の有無は勝敗を揺るがす問題なのだ。
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