ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー巌流島:滅ビノ森ー

シャツの胸ポケットから取りだした煙草の箱から一本抜いて咥えた。それをジッポライターで火をつけ、ひと口吸って煙を吐いた。

烈堂「なんだ?もう終わりか?」

顔の形が変わるほど殴られて動けなくなっている№Ⅰを見下ろす殲滅部隊の隊長。

№Ⅰ「(う…嘘だ……!!「黒使(僕たちが)」…何もできなかった!?)」

№Ⅰだけではない残りのメンバーも息はあるものの既に倒されピクリともしなくなっている。それとは逆に殲滅部隊の面子は傷どころか息切れひとつなく万全だ。

殲滅部隊……こいつら本当に人間なのか!?

三朝「若、絶壁組から連絡です。」

烈堂「代われ。」

トランシーバーを受け取ると到着した護衛者からの連絡を受けた。

『若。こちら総隊長の厳城です。』

烈堂「前置きはいい現状を報告しろ。」

厳城『……申し訳ありません。賊は既に、島内に侵入しています。』

絶壁に集まった護衛者たち。崖のすぐ下には巨大な船が乗り捨てられており、常人ならば上がるのは無理でもある程度腕の立つ者なら登り切れる高さだ。

烈堂「…ご苦労だった。全隊、通常配置に戻れ。」

皆生「若。やはり黒使は……」

烈堂「ああ。囮だ。」

偶然じゃねえ…警備の穴をピンポイントで突かれた。ネズミがいるな。


そのころ、闘技ドームでは次の対戦が始まる数分前で賭けの締め切りが迫り周防製鉄社長の周防みほのはどうしようかと考えていた。

みほの「う~ん……?どうしようかな~?」

小鳥遊悠選手のおかげで借金は返済できたし、お金にもすこし余裕はあるけど…この後も賭けを続けようかな~……。でも、私賭け弱いしな……。

「だから次の仕合は鉄板だって!」

「マジで?」

近くでタブレット片手に話している声が聞こえて耳を傾ける。

「ああ。うちの会社、支社があるんだけどよ。現地じゃコイツの武勇伝を知らない奴はいないぜ。死んだとかって噂もあったが……結城・クリストファー・凍夜、最強の元傭兵だ。」


数年前ソマリア沖、この地域に出没する海賊船は、付近を往来する商船の大きな障害となっている。

大型の商船の甲板、SLFと印字された揃いのタンクトップを着た黒人の集団があらゆる銃器を片手に叫んだ。

SLF「よく聞け糞虫共オオオッッ!!この船は俺達、「ソマリア解放戦線」が乗っ取った!!死にたくなけりゃぁ大人しくしとけよイエローモンキー共!!」

船の乗組員であったろう日本人たちは壁際に集められ両手を頭の上で組まされている。

「おい!船はお前たちにくれてやる!早く我々を開放し……」

日本人のひとりがそう言った瞬間、ダァンっと銃声がして男の頭が吹き飛んだ。

「う…うわあぁ」
「あああ!」
「わあぁぁ!」

SLF「黙れよイエロー!勘違いするなよ?これは略奪じゃねぇ。これまで略奪をしてたのは、テメーら「先進国の豚共」だ!!俺達は取られた物を取り返しただけ。正義は俺達にあるって訳だ。分かったか悪人共!!」

悲鳴を上げる乗組員、無茶苦茶な持論を振りかざす海賊。
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