ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー巌流島内:滅ビノ森-

うっそうと茂り日中でも薄暗い滅ビノ森と呼ばれている森林地帯では島に侵入した一団と片原滅堂の私兵である護衛者数十名がぶつかっていた。

黒いスーツにサングラスをつけた三番隊長のJ(ジェイ)がトンファーを操り敵の攻撃をガードしようとしたが獲物ごと断ち切られ腕から出血する。

眼帯の若者「J!」

J「軽傷だ問題ない。」

後ろに下がりつつ腕の傷を抑える。

眼帯の若者「…面倒な相手です。」

J「全くだ。「黒使(こくし)」噂通り、性質の悪い殺し屋集団だぜ。」

黒使と呼ばれた敵の数は5人、黒いマントにシルクハット、そしてペストマスクという揃いの格好ではあるが各々、トゥーハンドソード(両手剣)、槍、フレイル、鉄壊、薙刀と違った武器を持っている。

眼帯で両手にメリケンを装備した護衛者二番隊隊長の吉岡が一歩前に出る。

吉岡「数で勝るとはいえ、生け捕りにするのは骨が折れますね。」

切られたトンファーを捨てて、傷口に布を巻いて応急手当てを済ませたJが並び立つ。

J「「侵入者は生かして捕えよ」とのお達しだ。まもなく応援が駆け付ける。それまで持ちこたえればこちらの勝ちだ。」

島中に仕掛けられたカメラが対峙の様子をとらえた。それをいやらしい笑みで見つめているのが、メディスンマンの蕪木浩二。

蕪木「(おっほお♪「黒使」ですか。これは護衛者のみなさんも苦労するでしょうねえ♪)」

ハサド「うん、美味い!」

その背後ではご機嫌でカレーを頬張るアラブの旋風ハサドがいる。

蕪木「(しかし、このままでは敵の思い通りの展開ですよお!?んっ?おやおやこれは予想外!)」

護衛者たちと黒使の前にある一団が登場した。

「そこまでだ。」

J「若ッ!!」
吉岡「若!!」
「若ッ!」
「若ッ!」

護衛者たちが次々に声を上げる。

護衛者別動隊殲滅部隊の隊長にして片原滅堂の息子、片原烈堂を筆頭にやや小柄で金髪猫背ぎみの男、対照的にピンッと張った姿勢した日本刀をもった黒髪の男、そして巨体巨腕でどくどくな髪型をした男の四名。

烈堂「吉岡、J。至急、護衛者全体に連絡しろ。」

「「!?」」

烈堂「「北の断崖」の近隣に居る者は、全員現場に急行せよ、とな。」

吉岡「(北の断崖?)」

J「(あそこは文字通り自然の要塞。侵入には最も不向きな場所だが……)」

烈堂「吉岡・J両隊も至急現場に向かえ。……手遅れかもしれんがな。」

「「!?」」

烈堂「この場は、殲滅部隊が引き受けた。」

「「「御意!!」」」」

命を受けた護衛者たちは全員が膝を折って一礼してから即座に北の断崖へと移動し始める。

猫背ぎみの男、三朝(みさき)が黒使達を眺めた。

三朝「……ふ~ん?これはこれは
…何というか……クハハッ!若、コイツら馬鹿ですよ!森の中(こんな場所)で揃いも揃って長物を持ってやがる。」

黒髪で姿勢のいい皆生(かいけ)が口を開いた。

皆生「気を抜くな、三朝。生け捕りにせよとの御前の命だ。力加減を誤って殺すなよ?」

三朝「へっ!そんなヘマをするかよ。お前こそ、うっかり切り殺すんじゃねぇぞ。羽合(はわい)。お前もちったぁ手加減してやれよ。」

巨体巨腕の羽合は返事がわりに拳と拳をぶつけてゴンッと音を鳴らした。

ペストマスクにⅠの英数字がかかれている黒使が手を上げた。すると全員が帽子とマスクを外していく。

ナンバーⅡのマスクをしていたものはオールバックに口ひげを生やした男で、ナンバーⅢは顔中傷だらけのスカーフェイス、ナンバーⅣはどこか異国を感じる刺青が入った顔、ナンバーⅤは大きな目をしたまだ幼い顔立ちだ。

烈堂「へえ…色男じゃねえか。マスクしない方がモテるぜ。」

雰囲気が他とは別格別格…コイツが頭か。

ナンバーⅠは細目で顎の尖った彫刻のように整った顔立ちの青年。歳は恐らく烈堂と同じぐらいだろう。

№Ⅰ「それはどうも……片原烈堂。」

最優先ターゲットのひとり。

烈堂「自己紹介はいらねぇみたいだな。酷使の頭」

№Ⅰ「お互いにね。じゃあ、殺ろうか。」

武器を構える黒使達。

烈堂「フッ…生憎こっちは殺れねぇんだよ。覚悟しろよ疫病共。死ねないのは辛いぞ。」
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