ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:選手登場口付近ー

げんこつ一個分を両手の間にあけてひじは外に向けたアンバーという姿勢で構える沢田慶三郎。

それに対して目黒は低めのタックルのような体勢で飛びかかり腕を伸ばすが沢田は右足一本でその腕を押さえた。

捉えた右腕を踏み台に跳ねあがると目黒は斜め下に落ち、慶三郎は回転しながら飛びあがると回転蹴りを側頭部に打ち放った。


【バレエダンサー】

指先の一本まで自在に操るボディコントロール。

そして、あらゆるスポーツの中で、トップクラスのバネと柔軟性。

もしもバレエダンサーが、「蹴り」の技術を習得したら……一流の格闘家のそれを凌駕する。

蓮「……」

今の回し蹴り…目黒との体重差を覆すほど蹴りの威力を増幅させたのは…回転か!!

格闘で効かせる蹴りは、回転力(ひねり)で決まる。

故に、わずか数㎝、関節の可動域が広がるだけで蹴りの威力が増幅するため、一流の格闘家ほど柔軟トレーニングに重きをおく。

事実、蹴りに必要不可欠な足の筋力、バランス感覚、トップレベルの柔軟性を備える沢田は、巨漢の相手を数多く破っていた。

蹴り飛ばされ、立ち上がろうとする目黒に距離を詰め腿を蹴り、動きを止めさせた。

【最もリーチが長く】

そして回転をのせて顎を蹴れ上げる。

【自重の何倍も威力を増幅させ】

側頭部、肩、胸、脇腹と隙がある部分に乱射される蹴り。

【魔術師のように、あらゆる角度から繰り出す】

トドメには渾身の回転を乗せた……【蹴り(脚技)】をブチ当てた!!

何連、何十連打の蹴りを浴びた目黒は吹き飛ぶも、達磨のように即座に起き上がった。

慶三郎「…………ほんっとにしつこいわね。」

目黒「フーフー」

蓮「目黒ッお前…」

突如、二階堂が近づこうとするも、それを目黒自身が制した。

目黒「ハァハァハァ、中華…あっちに行ってろ…もう抑えられねぇ……はあぁぁあぁぁぁ……もういいだろうもういいだろうもういいだろういいいだろいいいだろろろう殺そう殺そうもういいフーーーッフーーーッ」

目玉をカッと開きボタボタと血涙、いやもはや血液そのものを流しブツブツと言葉を発している。

蓮「チッ」

異常者めっ!欲求も抑えることもできんのか!今ここで暴れられては、確実に「計画」に支障をきたす。

どうする?いっそこいつもこの場で屠るか?

考えを巡らせる二階堂の隣で巨体が動いた。

ユリウス「二階堂、貴様は目黒を抑えていろ。」

蓮「ユリウス。」

二階堂はサッと目黒の前に立ち動きを遮りつつ歩き出したユリウス・ラインホルトに目を向ける。

ユリウス「本来、沢田慶三郎は俺の対戦相手だ。ならば、俺が始末をつけるのが道理。手出しは無用。」

沢田慶三郎の前に立つユリウス・ラインホルト。真っすぐに姿勢を整える沢田と至って自然体に不自然なほどの筋肉を膨張させるユリウス。

目黒「どけよぉ中華ァ…」

蓮「動くなよ目黒。死にたくなければな。」

動きだそうとする目黒の前に立って牽制する二階堂……。
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