ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:選手登場口付近ー

蓮「これで逃げ場はない。」

前には二階堂とユリウス、背後には目黒が立ちふさがり沢田と好子は挟み打ちされる形になってしまっている。

慶三郎「~~ッ!!」

蓮「ふん、我らとて暇ではない。今なら見逃してやってもいいぞ。」

戸川「沢田!いくらお前でも闘技者三人相手じゃ無理だッ!!」

慶三郎「……好子、少しはなれときなさい。」

そういって一歩前に出た。

好子「沢田ッ!」

慶三郎「理屈じゃないのよ、男ってやつは。」

蓮「玉砕覚悟か、それもまた良し。」

慶三郎「ちげーよ、ボケ。テメーらにはわかんねぇだろ。闘技者のなんたるかってもんがよお。何時如何なる時でも自身の勝利を決して疑わない……それが闘技者だ!!テメーら東電の犬にはわかんねぇだろ!?アア!!?」

二階堂に怒鳴りつける沢田の背後で奇声のような叫びが響いた。

目黒「イイィイイイイイィハアアアアアアアァァッ!」

その耳を劈く奇声と共に目黒は床、壁、天井を跳ね飛びながら迫りくる。

戸川「!?」

あの巨体でなんて身軽さ!!

好子がそう思ったのも一瞬、気がつくと沢田に飛びかかってきている。

目黒「アアァァァアァァァァァッァアア!!」

好子「沢田ッッ!!」

【2G】

頭上から襲い来る怪物だったが沢田は回転とともに目黒を避けるとあり得ないほど鋭角に振り上げた足で目黒を蹴り落とし地面に押し潰したのだ。

好子「!!」
蓮「(何…?)」
ユリウス「…………」

顔面から蹴り落とされ白目をむく目黒だったが、口元が歪んだ。それは不気味な笑みだったようで「アハァ」と声を漏らし獣のように四つん這いで素早く二階堂たちの方へと移動した。

蓮「どうだ目黒?」

目黒「……最初より痛てえ。」

蓮「……なるほど(あの蹴り、厄介だな。)」

慶三郎「ッ~~!」

2Gでも倒せないですって?

化物級の耐久力を持つ変質者と、おそらく同等クラスの性悪イケメンに馬鹿マッチョ……コイツら、恐ろしく強い!

蓮「馬鹿な男だ。我ら三人を相手に勝機があると思うか?」

上等じゃない!クソッタレ野郎共、アンタ達だけは二回戦に進ませないわ!

慶三郎「ねえ、アンタ達。理科は得意だった?私が教えてあげるわよ、身体でね!!」

「空手の神」と呼ばれた男が居た。

名を太山倍起(ふとやまばいたつ)という。

常軌を逸した山籠もり修行。世の中の強豪達との死闘、そして伝説の牛殺し。この男の武勇伝は枚挙に遑がない。

ある時、太山の一番弟子がこんな質問をした。

「先生がこれまで闘ってきた相手の中で、一番苦戦した格闘技は何でしょうか」と。

太山は、何かを思いだすように眼を閉じた。わずかな沈黙の後、彼は静かに、だが、極めて厳かな声でこういった。

「闘舞士(バレエダンサー)とは決して闘うな」
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