ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:選手登場口付近ー

沢田慶三郎の前にユリウス・ラインホルトが対峙するのを、選手登場口から眺めている戸川好子。

戸川「頼むぜ沢田ァ。筋肉野郎に引導を渡してやりな。」

「……」

瞬間、背後から巨大な腕が伸びてきた。口と胴を掴まれると廊下の奥へ引っ張りこまれた。

戸川「!!!??」

暴れようにもビクともしない。常人の力ではない……。すると自分を押さえこんでいるものとは別方向から声が聞こえた。視線を向けると白夜新聞の代表闘技者である二階堂蓮が腕を組んで見下ろしている。

蓮「…お静かにご婦人。危害を加えるつもりはない。だが、騒がれると身の安全は保障しかねめがね。」

ハッハッハッハッと獣のような息遣いが聞こえてくる。自分を抑え込んでいる男、海一証券の代表闘技者、目黒正樹が口を大きく開き舌を伸ばして血走った眼で見つめている。

戸川「(こ…こいつら!海一と白夜の闘技者!?)」

蓮「……よし、いい子だ。貴女にはこれから「選択」をしてもらう。ゆめゆめ選択を間違えぬことだ。答えを誤れば人が死ぬぞ。さあ…始めようか。」

二階堂は冷徹な眼で戸川と視線を合わせるように屈むと人差し指で喉を押しながら話しだした……。

目と鼻の先の距離の闘技場ではレフリーの田城がふたりの間に立った。

慶三郎「醜い筋肉ねぇ好みじゃないわ。」

ユリウス「……」

レフリー田城「よぉしっ!両者開始位置について!!」

いざ開始……というところで、アニマルガールの歩が小走りにレフリーに近づいてきた。

歩「田城さん!本部から伝達です!」

レフリー田城「なに?」

歩「それが…」

田城「な……!?なんだと!!?」

ヒソヒソと何かを耳打ちすると歩は去っていく。

慶三郎「何してんのよ田城ちゃん!さっさと始めなさいよ。」

レフリーがふたりの間に立つと大きく手を伸ばして宣言した。

レフリー田城「勝負あり!!」

慶三郎「!?」

レフリー田城「マーダーミュージック棄権のため、ユリウス・ラインホルト選手、二回戦進出となります!!」

慶三郎「なッ…何ですって!!?」

「「「棄権!?」」」

このことは慶三郎はもちろん、観客たちも驚愕の声を上げた。

闘技会会長、片原滅堂は速水との対談が終わって仕合がどうなるかを眺めていたが、笑いをこぼした。

滅堂「ホッホッホ!こうきよったか。ようやくこのトーナメントの特性を利用するものが出てきよったわい。」

魏一族の長、魏絵利央がたずねた。

絵利央「特性?」

滅堂「左様。このトーナメントは計8日及ぶ長丁場。」

1日.2日―船
3日―バカンス(抽選)
4日―1回戦
5日―中日
6日―2回戦
7日―中日
8日―準々決勝、準決勝、決勝

ワンデートーナメントと異なり、工作する時間はいくらでもある。

絵利央「つまり今の棄権は……」

滅堂「うむ。買収かあるいは脅迫か……東電側の工作に間違いあるまい。」

王森「…東電を処分しますか?」

滅堂「よいよい♪好きにやらしてやれい。わざわざ「裏工作がし易いようにルール改正をしてやった」んじゃ♪存分に工作させてやるがよいわ。」
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