ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

闘技場を一望できる廊下で二人の男が闘いの終わりを見届けた。ひとりはユナイテッドクロージング社長の柳真、もうひとりは小鳥遊柏だ。

柳真は一度目を閉じてふーっと息を吐くと柏の方へと向き直った。

真「小鳥遊さん、おめでとう。健闘を祈ります。」

そういって差し出された手を柏は握り返した。

柏「柳さん、ありがとう。」

鳴りやまぬ歓声を他所に立見席で口から心の声がぽつりと漏れる少女が居た。

城「……す、スゴ過ぎる…極められて殴られて飛び膝蹴りまで直撃したの……」

悠「アレが金剛だ。おれの【金剛ノ型:不壊】の大本は金剛から覚えたもんだけど。根本的なスペックは全然違う。」

【小鳥遊流・金剛ノ型:不壊】攻撃を喰らう部位の筋肉を固めることでダメージを軽減する技であるが、全身に発動できるわけではない。一点に集中することになる。

対して金剛は全身に瞬時に筋肉の鎧を発することができる。そして全身に力を張り巡らせるということは悠と同様に一点に集中することも可能。その時に生まれる硬さは盾であり矛である現代が生んだ矛盾【筋肉反射(マッスルカウンター)】。

城「って……いうか、あの室淵剛三を、実質、右手だけで倒してしまいましたよ……。」

悠「……だな。」

城「あれはもう……にんげんじゃありませんよ……。」

悠「ふぅ…。」

ため息を一つこぼして戦々恐々とする城にお前が闘うわけじゃないだろチョップを落とす悠だった。

闘技場から退場し、廊下を歩いている金剛に声がかかった。ひとりは小鳥遊梔、そしてもう一人は谷間が丸出しの白衣姿で褐色の女医にして小鳥遊製薬の研究社員のマリアンだ。

梔「一回戦突破おめでとさんどす。」

マリアン「おめでと、怪我らしい怪我はしてないみたいね。」

金剛「どうも、ありがとうございます。」

マリアン「狭いけど一応、専用に部屋を借りれたから治療とかが必要ならいつでもいってちょうだい。できる限りのフォローはしろと柏の旦那から言われてるし。」

金剛「どうも。でも、今は問題ない感じです。」

そういって居る金剛だがまだ血が止まっていないらしく口の端から血がこぼれた。

梔「よかったらこれを」

着物の袂から薄い藍色のハンカチを取りだすと金剛に差し出した。

金剛「ああ、すみません。洗ってお返しします。」

血を拭っているとマリアンがいった。

マリア「しかし、圧巻だったわね。あのムロブチゴウゾウにほとんど何もさせず倒してしまうなんて。」

それを聞いて金剛の手がピタッと止まった。

金剛「…それは違うなマリアンさん。」

マリアン「え?」

金剛「室淵は恐ろしく強かった身震いするほどにね。」

梔「……」
マリアン「……」

金剛「ただ…俺はもっと強かった……それだけです。」

闘技会の猛る蔵王権現、堂々の二回戦進出!!
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