ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:医務室ー

「ハァッハァッハァッハァッ」
「はあっ…はあっ…はあっ…」

医務室のベッドで若い男女が息を切らせている。

帝都大学秘書兼看護師の吉沢心美が涙を浮かべほほを紅潮さてい絶え絶えに言った。

心美「はあはあっ……あっ…せ…先生……!もう…ダメです……。」

帝都大学の英はじめも汗をぬぐい、息を切らしながらいった。

はじめ「……よし、いいだろう……術式完了。」

心美「はあ~~…!疲れた~~……」

手術用の器具などを一人で運び渡していた心美はへなへなと座り込む。

傍で見ていたエレナが震えながら尋ねる。

エレナ「せ、先生…どうでしょうか…?」

病人よりも顔色が悪いはじめだがはっきりといった。

はじめ「…安心なさい。何とか蘇生に成功した。お兄さんは助かるよ。」

ベッドの上には色んな医療機器がつけられたセントリーの代表闘技者、茂吉ロビンソン(一回戦敗退)が眠っている。

エレナ「よ……よかった……!」

涙を流して倒れこみそうになるエレナを付き添っていたカルラがガシッと抱きとどめた。

迦楼羅「よかったなエレナ。」

エレナ「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」

はじめ「なに…礼には及ばないよ。どうやら雷庵選手に叩き付けられる寸前にこの靴がクッションになったのが良かったようだね。」

心美「お兄さんのものですか?」

エレナ「い、いいえ。それは兄のものじゃないですけど……よかった……。」

はじめ「それに、生きている闘技者の体を弄繰り回せる機会は滅多にないからね……フフフッ。」

心美「先生…ご家族の前でやめてください…」

医務室にも設置されているモニターではちょうど小鳥遊悠の姿が映されている。

迦楼羅「悠…おめでとう!」

因幡流もすごく強かったのに…やっぱり悠はすごいよ♪

心美「うふふ…やっぱりボーイフレンドの仕合が気になってたんですね。かわいい。」

泣きじゃくるエレナに心美は豊満な胸を貸しながらハートを飛ばしまくっているカルラを見ていた。

はじめ「……小鳥遊悠…か…。(かわいそうに……もう、長くはあるまい……)」

仕合が終わった闘技場ではアニマルガールたちが出てきて「休憩」の看板を掲げていた。

『皆さーん盛り上がってますかー?第五試合を始める前に休憩をはさみまーす♪再開までしばしお待ちくださーい♪』

片原滅堂の娘である片原鞘香は実況解説席で大きく背伸びをした。

鞘香「ん~~…!ようやく一息つけるなぁ~…まだまだ先は長いぞ~」

ロケット・マンのジェリー・タイソンが親指を立てて笑いかける。

ジェリー「サヤカSANおつデース!」

すると鞘香の耳についてるインカムに声が入った。

『姉ちゃん、俺だ。そっちは異常ないか?』

鞘香「あ、烈君!こっちはどの仕合もすごい迫力だよ~。烈君もこっちくればいいのに~」

殲滅部隊隊長(片原滅堂の息子)片原烈堂からの連絡のようだ。

烈堂『姉ちゃん…一応俺も仕事中だぜ?まあいいや。そんなことより…親父と無線がつながらないんだけど……』

鞘香「え?パパ?パパなら実況席に遊びに来てるよ?」

滅堂「はぁぅるぉ~~烈♪聞いとるか~~?」

片原滅堂と護衛者の王森と鷹山がやってきていて鎮座している。

烈堂『……』

鞘香「王森さん、鷹山さんお疲れさま!」

「「お嬢、勿体ないお言葉を…」」

烈堂『親父…あまりふらふらいんなよ、自分が狙われる立場だってわかって……』

滅堂「ほほほ!若いくせに固いこと言うでない。年寄りには適度な刺激が必要なんじゃよ♪」

烈堂『…ったく、これだぜ…まぁいい本題だ。殲滅部隊(俺たち)は今東の海岸線にいる。警備が甘いぜ、親父。島内に侵入者(アリス)がいる。』
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