ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

城「悠さん!」

凛「アレはマズいッスよ!呼吸ができないッス!」

久秀「……」

慌てた様子が見てとれる事に瓜田数寄造は小さく笑った。

思い知ったかい、小鳥遊悠。確かに純粋な力なら君は因幡君より二回りは強い。

だがね「相手に力を発揮させず斃す」これが暗殺者の神髄なんだよ。

鞘香『悠選手、苦しい展開です!!』

悠「ッ……!!」

身体がバラバラになっちまいそうだ。これほどの強さ、大したやつだぜ。

認めてやるぜ、因幡良!

鞘香『さあ!刻々と時間は流れます!悠選手、窮地脱出なるか!?』

ジェリー『あまり時間ハアリマセーン!因幡のカミはピアノ線並みにHARDデス!!コノママではユウsunの血管がCUTされちまいマース!!』

瓜田「因幡君、よくやってくれた。まずは一回戦突破だ!」

小鳥遊悠は絶望的な状況のなか夜見のジジイが得意げに話していたのを思い出す。

いいか小僧?闘いなんてのはなァ最初からパパッと本気で倒して終わらせちまいな。それが余計な体力使わず一番楽なんだからな。

悠「ハハッ…。」

やっぱりアンタとは、意見が合わねぇな。それじゃあ楽しめねぇだろうか!!

因幡「……(笑った?)」

悠「……お前のおかげだ。礼を言うぜ因幡。」

因幡「???」

悠「ようやく熱くなってきた。」

そういってニィッと大きく笑った悠は引っ張り耐えていた腕と足から力を抜いた。

次の瞬間、ブチィィンと伸ばしに伸ばしたゴムが千切れたような音とともに砂煙が舞う。

因幡「……」

瓜田「ば、馬鹿な!!因幡君の髪が千切られた!!?」

悠「蹴られて、殴られて、ブン投げられて、全力を出し切って闘う…それが最高なんじゃねぇか…!」

砂煙が収まりそこドッドッドッドッと激しい心音をならし髪の拘束を解いた男が立っている。

鞘香『こ、これは一体!?悠選手の雰囲気が明らかに変わった!!』

ジェリー『What!!』

滅堂「ホヒョッ」

絵利央「……」

「「「ワアアアアアッ!」」」
「やれー!!」
「いけー悠ー!!」
「悠ーー!!」
「因幡ー!!」
「怯むなイケー!」
「攻めろ攻めろ!」
「こっちは客だぞコラーっ!」
「なにゃってんだテメー!」

高まる周囲の熱気を他所に、殿下の宝刀である髪の毛を引き千切られた因幡は恐ろしく冷静であった。

暗殺拳・因幡流は代々、ペナソニック創業者一族・瓜田家を陰から支え続けてきた。

現当主・因幡良も例外ではない。幼少期より、ペナソニック現社長瓜田数寄造の護衛として常に傍らに居続けた。

それは……奇妙な関係だった。

数寄造は因幡に暗殺を命じることを嫌った。

「今の時代に暗殺など不要」

数寄造は因幡を対等の友として扱った。

だが、因幡良の根底をなす物は、暗殺者の血である。数多の命を奪ってきた一族の業(カルマ)は、同時に、唯一無二のアイデンティティでもあった。

『え?代表闘技者になりたい?』
『そ~そ~頼むぜ~瓜やん~~絶対優勝するからさ~~』
『う~ん…』

はっきりわかるんだよね~~……暗殺者(オレタチ)は、闘いの中でしか生きられないってさ。

因幡良は変則的ではあるが二足歩行だった姿勢から手を地面につく四足の構えに変えた。

悠「さあ、決着といこうぜ。因幡ァ!」

因幡「……望むところだ。」

獣が身体を震わせるような動きを見せると千切られても未だ遥かに長さと量を誇る髪の毛が襲いかかってきた。
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