ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

打撃の嵐がいきなり止んだ。因幡が頭を上げようとした瞬間、身体が横に傾いた。悠が足払いを仕掛けたのだ。虚を突かれ体勢が崩れたところに強烈なリバーブローが炸裂した。

因幡「ガハッ!」

鞘香『ああああーーーー!因幡選手、完全に足が止まったァーー!』

悠「どうしたコンブ野郎。大道芸は終わりか?」

大きく足を振りあげる。トドメのハイキックが決まった。…………が、足を上げた形で悠の動きが停止する。

城「え……寸止め?…………えっ?」

「「「!!!???」」」

観客も闘技者たちも全員が驚愕する。

瓜田「フフフッ。……よく分かったよ。搦手ではあちらが一枚上手。ならば正攻法で打ち破りましょう。任せたよ因幡君。」

鞘香『こ、これは一体ーー?悠選手、絶妙のタイミングで放ったハイキックをまさかの寸止め!!!一体何が起こったのでしょう!?』

悠「ッ!??」

鞘香『ん~?!(う…嘘でしょ~~……?)あっ……あれは……』

ジェリー『What!?』

悠に起こっている異変、それは振りあげている右足に絡みついているのだ……黒い糸の束、因幡の頭部から無数に伸びているソレ、つまりは髪の毛である。

鞘香『かっっっ髪の毛ですっっっ!!因幡選手の髪の毛が、悠選手にガッチリと絡みついているゥゥゥゥゥゥッッッッ!!』

瓜田「【因幡流「蜘蛛髪」】髪の毛と戦うのは初めてだろう?小鳥遊悠。搦手が通じないなら、正面から打ち倒すまでさ。」

因幡「くすくす、くすくす、攻守交替~♪」

笑いながら顔に覆いかぶさっている髪をかき上げると因幡の顔が見えた。どんなおぞましい顔をしているのかと思ってみれば色白の肌とクリッとした大きな目にどこか幼さの残る顔立ちをしている。

智子「ウソッ!!?」

慶三郎「めっちゃカワイイじゃないッ!」

皇桜学園秘書の智子とMミュージックの闘技者沢田慶三郎が似たような反応をした。

鞘香『こ、これまた予想外!因幡選手、今大会初めて素顔を露わにした!失礼ながら想像よりずっと愛くるしい顔立ち!不覚にも私、キュンときてしまいました♪』

悠「……あ?攻守交替?守りに入るなんざ御免だね。」

上げていた右足をダンッと地面におろして、力いっぱい打後ろに下げた。しかし、引っ張りぬこうとした瞬間、またも停止する。後ろに退いた右足が地面につく寸前に引っ張りこまれだしたのだ。

因幡「千切ろうと思った?それ無~理♪」

そういうと因幡は悠の足に絡みついて伸びている髪の束を引っ掴むと自分の体に巻きつけながら背負い込むように大きく引っ張り上げると悠の身体が大きく宙に舞った。

鞘香『も、持ち上げたーー!!?』

悠「ッ!?」

並の高さではない自分たちを見下ろしている観客たちをよりも高く上がっている。

因幡は髪の毛の束を巧みに操り空に舞っている悠を急降下させた。

鞘香『ああああーーーー!!一気に叩きつけるウウゥゥゥゥ!!?』

【小鳥遊流・金剛ノ型:不壊】

叩きつけられる一瞬、背中の筋肉を固め落下ダメージを軽減した。

悠「ぐっ……!!」

地面が砕けるほどの衝撃、金剛ノ型でも完全には防ぎきれていない。「肉の絞め」が甘かった……。骨に内臓に響く痛みに歯を食いしばって起き上がろうとしたときバチィィンッと破裂音と共に胸から腹にかけて鋭い痛みが走った。

ファイトウェアごと皮膚が裂けて血がにじむ。何をされたのかと頭を上げるとビュッビュッ、ブンブンッと風を切る音が耳に聞こえてきた。

因幡「おっしおきよー」

左手には悠の足を捉えている髪の束、そして右手には別の髪の束をもって振り回している。

鞘香『な……ッ!!い、因幡選手、今度は髪を鞭にしたアアア!!?』

瓜田「無駄だよ。髪をほどいた因幡君に死角はない。」

悠「ッ……。」

コイツの髪は髪じゃない…これは…鎖だ。
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