ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

自身の身体より長い髪を垂らし、大きくガニ股の足を開き上半身を猫背に曲げ手をだらんと伸ばした異様な立ち姿。

みほの「え!?(小さい?!私より小さい…。あんな人が闘えるの?)」

周防みほのは156センチだった。

別の観客席ではMミュージックの代表闘技者沢田慶三郎が顔を青くしていった。

沢田「相変わらず不気味な子っ!しかも髪伸びた?思いっきり嫌いなタイプだわ!」

隣に座るMミュージックの社長の戸川好子は呆れたように言った。

戸川「…好みのタイプだったらどうするつもりなんだよ?何考えてるんだコイツ…」

闘技場の全域が見下ろせるVIPルームでは吉音たちも悠と対戦相手を見つめていた。徳河詠美がやや厳しい表情で口を開く。

詠美「さっきのようなことにならなければいいのですけど」

魏雷庵の闘いという名の蹂躙。水都光姫も渋い顔でうなずく。

光姫「魏一族は確かに暗殺を生業とする一族じゃからな。しかし、あの雷庵という者は……他の魏一族とは別物と思ってよいじゃろう。しかし、この因幡というものも暗殺一族じゃったはず……。悠といえど油断できる相手ではないじゃろうな。」

吉音「大丈夫!悠だってすっごく頑張って鍛錬してたんだし、きっと平気だよ!」

力強くそういう徳河吉音はフンスと両手を握りしめていった。

鞘香『あ…………皆さま、お待たせいたしました。これより!一回戦第四仕を開始いたします!!』

本来なら両闘技者が登場した時点で実況解説席に移動している鞘香だったが因幡に驚いて腰が抜けて座り込んでその場で実況している。

悠「……」

小さい。摩耶よりも小さい闘技者というのはハッキリ言って希な存在だ。

だが……あれは「擬態」だ。

理屈なんてチンケなもんじゃない。今まで何度も味わってきた直感。

コイツは強い。

そうしているうちにジェリー・タイソンの手を借りて鞘香は実況解説席へ、悠と因幡の間にはレフリーがやってくる。

レフリー山本「両者!準備はいいか!?開始位置についてぇ!!」

悠「……」

このとき悠の耳には届いていない。

歓声が、声援が、実況が、悠には聞こえていない。

五か月間の地獄の鍛錬が終盤になるころ悠は冬花夜見に四六時中、朝も夜もなく襲われ続けた。夜という闇で視界を奪われ、森という地で獣や虫の気配と音に惑わされ戦うどころか生き残る事に必死だった。

その反省、経験を生かし、悠は戦闘時意識的に音を遮断していた。

敵の息遣いを除いては……

因幡「フシューーッ、フシューーッ」

レフリー山本「それでは両者……構えてェッ!!」

悠「……」

因幡「……」

【阿修羅】VS【黒呪の亡霊】

レフリー山本「始めェェェェェッ!!」

壮絶怪奇なる一戦の幕が開けた!!
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