ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

最愛の妹の声援に茂吉・ロビンソンは瀕死ながら最後の力を右手の人差し指と中指に込めた。

エレナ!…ありがとう。……味わうがいい魏一族ッ!

全身全霊をかけすべての力を集中した一撃を魔人・魏雷庵へ撃ち放つ!バリツ奥義二指ッ……!

茂吉「ガぁッ?!」

しかし……………………その一撃は届かなかった。雷庵の剛拳が茂吉の顎を打ち抜いたのだ。完全に入った一撃に茂吉の脳は揺れ意識が飛ぶ…。

エレナ「兄様!!」

雷庵「おっと!ちょっと本気出しゃあこのザマかい。」

倒れ落ちそうになる茂吉だったが喉を掴んでそれを許さない。

鞘香『また掴まったーッ!!』

雷庵「情けねえ。」

茂吉「!!」

首を掴んだ腕が持ち上がっていき、宙づりになる茂吉。

鞘香『かッッ…!!片手で軽々持ち上げたーーっ比較的細身の雷庵選手、驚異の怪力だァーー!』

雷庵「何張り切ってんだ、コラ。テメー如きが俺に届くと思ったか?あァ?」

茂吉「ッ(～～!?ちっ、力が入らない…!)」

雷庵「どうでもいいんだよ。こんな大会も、ジジイどもの企みも、闘技者(おまえら)も、観客(ブタども)も、俺がやることはたった一つ。皆殺しだ。」

茂吉「っ!!」

人間の顔ではない、悪魔のように魔人がおぞましい笑みを浮かべている。

雷庵「まずは一人……」

茂吉「～～ッッ!!お…のれ……!!」

もう一度、もう一度と腕を振りぬこうとした瞬間


ゴキンッ!


骨の砕けるi鈍く生理的に拒絶したくなるような音が広いドーム中にこだまする。

エレナ「……に…に…………い……さ…ま……?」

静まり返るドーム内にエレナの消え入りそうな小さな声。吊り上げられている茂吉の首がぐらんっと曲がった。その顔は白目をむき口は力なく開いて反応がない。

それを見てレフリー山本は、ハッとなり試合終了のを宣言する。

レフリー山本「そっ、それま…」

雷庵「ハアァァぁ!!」

終了宣言が言い終わるよりも先に雷庵は茂吉を頭から地面へと叩き落した。

レフリー山本「で…!!??」

雷庵「…………審判。ストップが遅すぎるぜ。お陰で殺っちまったじゃねぇか♪」

レフリー山本「!!!」

大きく唇を突き上げて笑いかける雷庵。その足元で首がおかしな形に曲がって地面に倒れ伏せる茂吉・ロビンソン。

エレナ「兄様ァアアア!!」

鞘香『…………あ……し……勝負あり……雷庵選手の勝利です……』

「「「「……」」」」

ドーム内が静まり返った歓声も、拍手ひとつも聞こえてこない。重い空気だけが広まっている。

久秀「……」
凛「……」
城「(こ、こんなに…軽いんですか!人の命……)」

紫苑「……」
智子「……」
刹那「(気に入らないなぁ…)」

雲山「(この男、私の知る魏一族とはまるで違う……)」

そんな中、魔人は高らかに笑った。

雷庵「ギャハハハハハッ!どうしたテメーらもっとはしゃげよ!!見たかったんだろ?絶命トーナメントがよぉ!!」

滅堂「絵利央、彼奴は…」

絵利央「左様。雷庵は魏一族のイレギュラー。殺戮の限りを尽くす魔人じゃ。何人であれ、あれを制することは不可能ですじゃ。」

救護班がタンカーをもって慌てて駆けつけてくる。

「気を付けろ!下手に揺らすんじゃないぞ!」

「わかりました!あれ……なんだこれ……靴?」

「バカ!何してる乗せるぞ」

「は、はい、すいません!」

数人がかりで慎重かつ迅速に茂吉をタンカーに乗せると揺らさないように運んでいく。

エレナ「しっかりして!!兄様っ!!
兄様ぁっっ!!」

叫びながら運ばれていく兄についていくエレナ。その後をカルラも追うが、一度振り返り雷庵を睨み付けた。

迦楼羅「雷庵……!お前は……私が殺すッ!」

魔人はドームの上部、VIPルームのほうへと視線を向けた。

待っときな老害共。すぐぶち殺してやる。

悪魔じみた笑顔で首を掻っ切るジェッチャ―を仕向けた。

滅堂「……ほほう。ワシにも殺意を向けよるか、小童。」

絵利央「あッ、あのガキャアアワシまで挑発しよるか!!」

滅堂「いや、この殺意、あるいはお主宛かもしれんのう、のう、アギトや?」

【滅道の牙】可能アギトは静かに雷庵を見下ろしていた。