ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

司会席でキレ気味のカルラだが、選手登場口の廊下で様子を見ている魏の一族の若者、魏怜一が憤っていた。

怜一「……胸糞が悪いぜ。アイツの実力なら【外し】を使わなくとも勝てるだろうに。いたぶるような真似を…!!」

堀雄「抑えろ怜一。それだけではあるまい。ああ見えて雷庵は仕事は忠実にこなす男だ。」

通常の状態で闘って勝負を長引かせるより、外した上で短期決戦を狙っているのだろう。トーナメントではいかにダメージを抑えるかが肝となってくるからな。

ホリス「……」

二人とも正しい。

雷庵が【外し】を行ったのは

①圧倒的武力で相手を蹴散らす為
②闘いを短期で終わらせる為

当然、この二つも理由ではある。

だが、最大の理由は別にある。

今の間にも雷庵の蹂躙は続いている。投げ飛ばされた茂吉が立ち上がろうとするもダッシュで近づいて勢いそのままに蹴り飛ばした。

茂吉「ガバァッ!」

血を吐き散らしながらさらに後方へ吹き飛ばされていく。

何とか立ち上がろうとするが、その一瞬の猶予も敵は与えてくれない。

雷庵「バァ♪」

馬鹿にするように舌を出して目の前まで近づいてきた雷庵は首に手をかけた。そしてそのまま片腕だけで茂吉を釣り上げていく。

茂吉「ぐっ…ぁっ……!」

雷庵「持ち上げて~……落とォォすッッ!」

それは技でも何でもない。物でも扱うように釣り上げた人間を地面に叩きつけた。地面が砕けるほどの威力に茂吉の意識は飛びそうになった。

エレナ「お願いもうやめて!」

兄が蹂躙され涙を流して叫ぶ妹。

雷庵「やめるか、阿呆。」

しかし、答えを返したのは魔人だった。未だ首を掴んでいる腕にさらに力を込めた。すると腕の筋肉がみるみる隆起していき、茂吉は両手で外そうとするがビクともしない。

鞘香『あああーー!!絞め上げだァァァァ!!』

迦楼羅「ッッ雷庵!」

鞘香『実に単純!実に残酷!雷庵選手の掌が茂吉選手に喰らいつく!!このままブラックアウトしてしまうのかーーーー!??』

この時、会場で、モニターで島のどこかで仕合を見ている闘技者たちは気がついた。

紅「こ、コイツ…!」

雲山「見せつけているな…」

雷庵「ハアァァぁ!」

よく見ておけよ有象無象共!俺が最強だ!!!

食事をしながら観戦していた末吉らもテーブルから離れてモニターにかじりついている。

末吉「あえて単純な技で攻め立て、歴然と力量差を示す。残酷なことを……」

大久保「あの野郎…全方位に喧嘩売りよった。」

茂吉側の選手登場口廊下でセントリー会長の橋田敬は震えていた。

橋田「そ…そんな…あの茂吉が子供扱いだと……。」

エレナ「もうやめてーー!!兄様ッッ!!兄様ぁッッッッ!!」

顔を真っ赤にして涙を流しながらエリナは叫び続けた。

茂吉「ぐっ……ぅぅ!!」

絶体絶命のピンチだが茂吉はまだ諦めず首に喰らいついている魔人の腕を解こうとする。

エレナ「ッッ~~どうして?!どうして棄権しないの!!?なぜそこまで勝利にこだわるの!!?兄様ァァ!!」

遠のく意識の中、茂吉の耳にエレナの声は確かに届いていた。

エ……レ……ナ……困らせ……ない…で…おくれ…………ない。

ぼやける視界、ついには魔人の腕から手を離してしまう。

…………いかない…負けるわけにはいかないッッッ!!

一度は力が入らなくなった腕を突き伸ばした。ギチャッと水っぽい音とともに雷庵の目元の肉が削げる。

雷庵「!!」

この野郎ォ…抉りに来やがった!

茂吉は歯をむき出しにして食いしばり血走った眼で魔人を睨む。

私は勝ち続ける。我らが「血」の為に!!
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