ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

致命に匹敵する一撃を与えた男が立ちあがったかと思えば変わり果てた姿になった。茂吉・ロビンソンは構えを取りつつ警戒する。

面妖な…まるで別人じゃないか。奴は一体何をした!?

雷庵「はぁぁ……さあ、蹂躙するぜ。しっかり目玉ひん剥いてろよ!」

雷庵はだらりと腕を下げたまま、ユラっと身体が揺らした。瞬間、茂吉の目の前まで間合いを詰めて右拳が顔面に炸裂する。

茂吉「!?」

何があってもいいように構え、最大限に警戒していたが殴り飛ばされ漸く自分が吹き飛んでいることに気がついた。倒れそうになるが何とか立ち止める。

エリナ「兄様ッ!!?」

ぶっ飛ばされている兄の姿に悲鳴じみた叫びをあげる。

雷庵「シャアアアッ」

そんな声をかき消すように雷庵は雄たけびを上げて更に打撃のラッシュを叩きこむ。顔、肩、胸……狙い打ってるわけではない。ただただ、拳をぶつけていく。

茂吉「~~ッ!」

重いッ……そして速いッ!こんな直接的な攻撃に…まるで反応が…追いつかないッ!!

凛「す、すごい!!急に動きが変わったッスね!!」

城「……ま。松永さん、アレって……百目鬼家の…」

久秀「……確かに似てはいるわね。けれど、同じじゃないわ。雷庵のあの姿…アレは鬼状態とは別物よ。」

VIPルームでガラスを打ち破って飛び出していきそうなほど激怒していた絵利央が何とか理性を取り戻して滅堂に語る。

絵利央「日頃、人間は身体能力の三割程度しか使えぬよう「枷」がかかっておる。肉体を守るために、脳がセーブしておるのです。」

普通の人間ならば身体が負担に耐えきれず崩壊してしまう程の力。

魏一族は長年の「品種改良」によって力に耐えうる肉体を手に入れた。いわゆる「火事場の馬鹿力」まさに、人智を超えた力を発揮できる。

リミッターを解除し、鬼神の如き力を得る。これが魏一族秘伝「外し」ですじゃ。

引き出せる潜在能力の「解放率」は個人の視覚に依存する。

魏星也:36%
魏九郎:25%
魏風水:28%
魏変造:19%

今回、島に連れてきておるのは、一族の中でも戦闘技術と「外し」に特に秀でておる者達。

ワシの再従兄弟(またいとこ)の曾孫怜一。彼奴の解放率はおよそ50%。

ワシの大叔父の玄孫、堀雄の解放率は65%

堀雄の甥に当たるホリスの解放率はおよそ80%

ワシの曾孫、カルラにいたってはあの若さで85%の解放を実現しておる。さすがワシの曾孫!

滅堂「ひょー!あの年で85%も「外し」よるか。末恐ろしい娘じゃのう。して?雷庵の解放率はどのぐらいなんじゃ?」

絵利央「…………雷庵、彼奴の潜在能力解放率は……100%!!魏一族1300年の歴史でも、極僅かな者しか辿り着けなかった境地。間違いなく雷庵は、魏の歴史に名を刻むことになるでしょうな。」

殴り続けていた雷庵は突如それを止め、茂吉の服の襟を掴むと力任せにぶん投げた。

鞘香『放り投げたアッーー!体格で勝る茂吉選手をボールのように飛ばして見せた雷庵選手、恐るべき怪力です!!』

エレナ「兄様ッ!!」

迦楼羅「ッ(雷庵…!!)」

司会席で観戦しているエレナは涙目で叫び、カルラは青筋を浮かべ目の前のテーブルの一部を握りつぶしている。
38/100ページ
スキ