ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸城麓・大広場ー

同様に天狗党員たちも演壇へと突き進むのを横目に見ることができた。
全部でどれだけの人数になるのかは把握できないが、広場の各地で声をあげた天狗党員が次第に合流して一団となっている。

一団となった天狗党は、まるで破氷船のような勢いで生徒たちの群れを断ち割って進撃する。

悠「ちょっとヤバそうにだぞ。このままじゃ天狗党に演壇が乗っ取られるぞ」

新「大丈夫。ミッキーならそれぐらい最初からわかってるはず」

悠「あー?どういうことだ」

しかし天狗党の一軍は更に勢いを増して演壇に迫る。今まさに天狗党の切っ先が演壇に触れるかと思われた時、別の鬨の声が上がった。

「今だ、押し返せ!」

天狗党の突進の前に黒衣の集団が壁のように立ち塞がった。突然姿を表した一軍の先頭に立つ少女の鋭いまなざしには見覚えがあった。

悠「あれは、食堂であった…」

平良「火付盗賊改長官、長谷河平良(はせがわたいら)。参るぞ!者共、続けっ!!」

悠「あの人が、火盗改の長官!?」

砲弾のような猛烈な勢いで突っ込んできた天狗党の一軍を、火盗の黒い壁が受け止める。演壇の前で両軍の激しい斬り合いが始まる。その様はさながら合戦だった。

銀次「へい、ベイビーたち、こっちだ!」

悠「うわぁ!?」

目の前に突然現れた毛むくじゃらに悲鳴をあげるおれ。

新「あ、ミッキーのとこのじごろだ」

銀次「おう。シンさん、久しぶりだな」

新「わあ、相変わらずもじゃもじゃだ~」

銀次「そりゃあ、毎日の手入れが行き届いているからな」

新「おおお~!」

悠「なんの話やねん…」

銀次「おっと、のんきに話してる場合じゃなかったぜ。火盗が防いでる間にお嬢のとこへ!」

新「分かった!悠も急いで」

悠「え、あぁ、がってんでぃ!」

銀次「はは~いいノリだな悠の字!惚れちまいそうだぜ!」

悠「ぞわりとくるわい!」

~~

朱金「ちっ。なんで俺があいつのサポートに回らなきゃならねぇんだ!」

真留「これは執行部からの指示なんですから、ちゃんと従ってください」

朱金「んなこたぁ、いわれなくたってわかってるよ!」

真留「だったらしっかりお仕事してください!」

朱金「はいはいはいはい!分かりましたよっ!おうよく聞け、お前ら!現在、天狗党は正面の火盗が壁になってその進行を食い止めている。これより俺たち北町奉行所は左翼から天狗党に突っ込んで、これをつぶす。作戦は以上。思う存分ストレス解消してこい。あ、間違ったフリして火盗の奴等を殴っちまっても構わんぞ」

真留「遠山さま!」

朱金「冗談だよ。固い奴だなぁ。行くぞ、野郎共!北町奉行所、全軍突撃だ!」

「「「おおぅ!」」」


~~


想「北町が動いたみたいですね」

広場の逆サイドに展開していた南町奉行所の陣でも、逢岡想が北町の動きに反応する。

想「これより我々南町奉行所は右翼から天狗党に突撃をかけます。先ほども説明した通り、三軍の兵力を集中させる事で、兵の数は我々が有利。戦うときには数の有利をいかしてください。必ず複数で一人にかかるようにすればこちらの被害は最小限に留められるはずです。作戦は以上です。それでは南町奉行所、全軍突撃!!」

「「「おおぅ!」」」

往水「おお~~はぁ」
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