ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

クカカッ!楽しいじゃねぇかイギリス野郎。それならこんなのどうだ?

雷庵は汗をぬぐう仕草をしながら尖った歯で自分の手の甲を切り裂いた。

雷庵「いくぞオラァッ!」

茂吉「……」

来い!魏一族。

向かいくる魔人を迎え討とうとするが、まだ距離があるのにも関わらず雷庵は腕をつきつけてきた。そこから赤い液体が飛び散り茂吉の目を打った。

城「今のは!?」

久秀「目つぶしね。自分の血を使って。」

茂吉は慌てずに血を拭った。しかし、一手遅く雷庵の腕が振り首を掴みあげた。

立見席で見学していた八頭貿易の代表闘技者、右京山寅が顔をしかめる。

寅「チッ、どっかのボケみたいで下らねぇ。芸のない喧嘩殺……」

サーパイン「シャアアアアッ!男ならガッツリ殴り合いだぜぇ!」

隣でいる夜明けの村の代表闘技者、鎧塚サーパインの大声でかき消された。

雷庵「バァアッーー!!」

掴んだエリを引っ張りこみながら右腕を振り降ろす。しかし、茂吉は返し手でつかみ取った。そしてそのまま停止する。

城「あ、あれ?」

凛「魏の人の動きが完全に止まったッスね?」

絵利央「ぬぅ…!敵ながら見事。あの若者、やはり古流柔術家か。あの刹那、絡めよった。」

現代格闘技と古流武術の大きな相違のひとつ、それは「指関節」。闘いのあらゆる局面で常に使い続ける「指」。指を破壊されることはすなわち、敗北に等しい。

茂吉「フフ……効くだろう?少し捻りを加えるだけで。」

雷庵「~~ッ!!」

大きく腕を回すと雷庵の腕が捻りあげられ顔が歪んだ。ちょっと振れば外れそうだが……。

皇桜学園の代表闘技者、桐生刹那はつまらなそうに仕合のやり取りを見ている。

刹那「(絶妙にポイントを極めている。)」

あの牧師の彼、なかなかやるね。

茂吉「このまま折ることも用意なんだが、まだ続けるかい魏の人よ?」

雷庵「テメェエェ……なあんてな♪」

苦々しい顔から一転、雷庵の顔は邪悪な笑みに変わる。

茂吉「!?」

雷庵「ケッ!小技で勝ち誇ってんじゃねーよ。」

そういって雷庵は捩じられている腕を振戻した。すると極めていた技が外れ、もとの組合の状態に戻ってしまった。

滅堂「ほひょう!技を外しよった!」

絵利央「当然。飛鳥時代より1300年間、武に生きてきた魏の一族。」

あるときは高名な武芸者の子娘と契りを結び、ある時は優秀な外部の「種」を取り入れる。

【品種改良】と技術の吸収を続けた1300年。

その結果、魏一族は世代を重ねるごとに「戦闘へと特化した人種」となり、また、外部から優れた戦闘技術を常に取り入れ続け、その体系は日々進化している。

魏一族に対応できぬ技など……ない!

雷庵「ククク……極まったと思ったかい?俺に勝てると思ったかい?いい夢見れたかバーーカ♪」

茂吉「……ハハハ「夢」ですか……それならば正夢にしてみせますよ。」

両雄の闘いはまだ始まったばかりである……。
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