ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー東京池袋界隈:建設中ビルの屋上ー

建設中のビルのはずだがその屋上に一人の女性、指ぬきグローブにタンクトップ、ホットパンツでブーツという格好で横たわりライフルのスコープを覗いていた。その先にはファミレスがある。

「はあ…今日もファミレスかぁ……。そろそろお顔見せてくれないかなぁ~?たまには外に出ないとダメだよ~?」

その女性の目は白目が黒く、黒目が白という瞳をしている。

その背後でガチャッと床の一部が開いた。頭にバンダナをつけた同じ瞳をもつ若い男性が顔をのぞかせる。

「風水~?やってるか~?」

風水「あ、変造ニイお疲れー。」

ライフルのスコープから一切目を外さずに返事をする。

変造「飯買ってきたぞ。今のうちに食っとけよ。」

風水「わーありがとう!助かるよ~。あれ、星也さんと九郎は?」

変造「あいつらなら東京観光にいったよ。俺がジャンケンで負けたんだ。冗談じゃねぇよな~!わざわざ有給使って上京してるってのに、観光もできねぇなんてよお。」

そういいながら食べ物や飲み物が入ったビニールの袋を置いて隣に座った。

風水「アハハ!また遊びにおいでよ~♪いただきまーす。」

スコープからは視線を外さずに風水はパックジュースを取りだすと片手でストローを刺して口に咥えた。

変造「そういえば、向こうはそろそろ仕合が始まるころかね?」

風水「仕合?あー闘技仕合ね。変造ニイは気になるの?」

変造「そりゃあ気にするだろ。何しろ、ウチの代表はあの雷庵なんだからよお。全く……よりによってなんでアイツが…あっ、悪りい!お前にいうことじゃねえよな。」

風水「あーいいっていいって♪うちの兄貴はイカレてるからねー。何言われてもしょうがないっしょ~。」

魏雷庵の妹:魏風水

変造「そ…そうか…お前ドライだよな。ま、それはともかく「マルタイ」に動きはあったか?」

風水「ん~ん~~?全然ダメですね~。張り込みから四日一度も姿を確認できない。間違いなく、あのファミレスに居るはずなんだけど。」

変造「っていうか、何でファミレスで暮らしてるんだ……。」

風水「さぁねぇ、だけど、爺様も何考えてるんだろうね~?「依頼主」を監視しろなんて変な指示だよね~」

そのファミレスの奥の席でノートパソコンやスマホをテーブルに並べて陣取っている男が画面に映る闘技仕合の様子を眺めていた。

『それでは続きまして一回戦第三仕合を行います!皆さん盛り上がってますかーーー!?』

『ウオオオオオッ』

禅「……」

【池袋一の情報屋】にして【アンダーマウント社の真の社長】烏哭禅、であった。

そのころ、闘技ドームではちょっとした騒ぎが起きていた。

太田「雷庵が居ない!?」

アンダーマウント社(禅の影武者)太田正彦が叫んだ。

「ハァハァ、そうなんです……ちょっと目を離した隙にいなくなってしまって……。」

息を切らせてそう伝えたのはアンダーマウント社の秘書で小柄で巻き髪のツインテールの本山ほたる。

怜一「こっちにはいない」

ホリス「まったくあいつは…」

堀雄「Cホールあたりか?」

ほたる「魏の皆さんにも探してもらってるんですけど……ど…どうしましょう社長?」

太田「(……うんどうしよっか……?)」

などと口が裂けても言えないがピンチに陥った太田だった。
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