ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

がむしゃらに攻撃を続ける河野と受け続ける阿古谷の様子は二人が巨体であるがゆえ一件派手な闘いに見える。

しかし、ムジテレビの代表闘技者の大久保直也はつまらなそうに言った。

大久保「一で捌いて、二で加撃。「ザ・堅実」って感じやな。「華」がないわ「華」が」

その隣にいる義伊國屋書店の代表闘技者の金田末吉は訝しげに顎に手を添えて頭をひねった。

末吉「……」

大久保「何や金田?気になることでもあるy
か?」

末吉「あ、いえ。気になってるってほどではないんですけど…なんだかあの人…わざと時間をかけてるような…。」

そのやり取りをしている間に少し局面が動いた。

春男の攻撃を受け流すのは同じだったが清秋はカウンターで拳を横っ面に叩きこんだ。丸眼鏡が砕けて顔から落ちるが、ギロッと鋭い眼光で睨むと大きく右手を振るってぶつけた。ただの振り手でもその巨大な手のひらの一撃はタイヤをぶつけられるにも等しい衝撃だ。

阿古谷も後ろに吹き飛んだが両手を広げて地面に身体を落とした、背面跳びで浮き上がると機敏に着地した。一連の動作にまったく無駄がない。

清秋「……しぶとい豚だ。」

即座に大盾(前腕)を構える清秋だが、どうやら吹き飛ばされると同時にリーパーを仕掛けていたのか春男の手のひらが裂けている。

春男「ヌヴヴヴヴヴ!!!!い、痛いじゃないかァァァァ!!お、俺はァ!!ヒマラヤで一番強いんだ!ヒョウも!熊も!!虎も!!!全部倒したんだ!!!!お前みたいなチビ、簡単に倒せるんだ!!!!」

遂に本当にキレたのか春男は咆哮した。余計な力も籠ったのか裂けた皮膚から血が噴き出しまくっている。観客たちはその様子に盛大に盛り上がった。

その時、阿古谷の耳に瞬花の声が入った。

瞬花『阿古谷。お待たせ、解析完了だよ。』

阿古谷「……了解。決めるぞ檜山。」

春男「グォオオオオオッ!」

文字通り怒り狂った巨人が叫びながら拳を振り降ろす。

阿古谷「……」

着弾寸前ブブッと耳の中で機械が振動する。すると阿古谷は春男の巨拳を難なくかわし、懐に潜りこむと右下段足刀を膝に、左下突きを腹部に撃ちこんだ。二撃を受け上半身が崩れたところ右掌底を顔面、しかも左の目玉に叩きこんだ。

春男「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」

幸いにも目は潰れなかったが周りの骨、いわゆる眼底ににひびが入った。その激痛にさすがの超巨人も悲鳴を上げた。

鞘香『カウンタアアアアアアアアッ!!!!』

秋男「ハッ!春男ォォォ!!」

春男「コッ…このヤロオオオオオオオッ!!」

押さえていた手を退けると目の周りは青紫色に腫れ出血もしている。

しかし、そんなことは関係なく阿古谷の攻撃は止まらない。一撃一撃が恐ろしく重い拳の連射を浴びせかけた。

鞘香『ラッシュラッシュラッシュラッシュ!!阿古谷選手の勢いが止まらないーーーー!!一気に形勢逆転ここで決めるか!?』

春男「~~ッッ!!い……痛いじゃないかぁぁ!お前、大嫌いだァァァッ!!」

殴り続けられながらもゴリ押しで腕を伸ばして捻じ込むと阿古谷の道着の襟を掴んだ。そして無理やり引っ張りこんで拳を振るう。

城「掴んだままいった!これは躱せない!!」

拳が空を切る。阿古谷の姿が消えた。

春男「あれ?」

阿古谷「フンッ!」

道着を脱ぎ棄てたのだ。そのまま身をかがめて蹴りを膝へと見舞った。


春男「ア゛ア゛ア゛ッ!ふ、服を脱ぐなんて……ズルいぞ!」

阿古谷「無駄だ。貴様の攻撃はもう当たらない。諦めろ。正義のために潔く死ね。」
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