ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

子供のころ今よりも身体も心も弱かった僕は卑屈な人間だった。けど、二人の友達ができた。出会いは最悪だったけど最高だった。その友達が僕の人生を大きく変えたんだ。

摩耶「シィッ!」

自分の倍はあろうかという巨体に恐れずに進撃し拳と掌を連打する。アダムは両腕をどっしりと構えて受け止めた。パパッパンッパンッと激しい肉と肉がぶつかる音。

アダム「チッ」

地を踏みしめてガードしていたアダムだが上半身をのけぞらせて左のローキックを仕掛けようとした。

すると摩耶は即座に両腕を止めて舞うように身体をねじり大きく右足を振り上げてアダムの左足の膝を踏みつけた。

軸足として力が入っていた関節部分への一撃にアダムの動きが停止し蹴りだそうとした右足を地面につけた。

摩耶「ハァっ!!」

力強く吠えた摩耶のミドルキックがアダムの横腹に突き刺さる。強制的に立て直させられた不安定な体勢ゆえにガードも腹筋に力を入れることも間に合わない。

アダム「~~ッッ!!」

響くッ!ミドル級の重さじゃねぇ!コイツ……強えじせゃねぇ!

有象無象の喧嘩自慢程度なら今ので終わっていたであろうがアダム・ダッドリー(選ばれた強者)はまだまだ余裕。射程内にある頭を目掛け肘を振りおろしたが。摩耶は素早く身を引きつかず離れずの位置を陣取った。

観客席で両手を組んで祈るように見ている鈴猫と余裕の西品治。

西品治「(それでいい。仕上がっているな。)」

西品治明と摩耶の出会いはほんの五ヶ月前、摩耶の闘技会レビュー戦での活躍を観客としてみて、その強さに感服し他社の闘技者でしかもレビューしたばかりであるにもかかわらずコンタクトを取った。

だが、意外なことに摩耶は西品治明のことを知っていたのだ。

西品治警備保障は昭和37年設立。国内最大級の民間警備会社。子会社に損害保険会社、防災設備メーカー、データセンター事業などを有する。そしてその若き社長の西品治明は摩耶が通う大学で特別講師として呼ばれたり、就職説明会などでやってきていたので顔を知っていたのだ。

そして話し合いの末、専属の闘技者にはなれないが桜花フラワーと協定を結ぶことと優勝した場合自分の借金を全額肩代わりしてくれるならという条件を出した。すると西品治は二つ返事でそれを承諾した。

また、それだけでなくもともと西品治警備保障は7人の闘技者を抱えていた。柔道家、キックボクサー、サンビスト……彼自らが選び抜いた猛者揃い。平均身長は189センチ。文句なしのヘビィー級である。そんな巨漢たちを相手に摩耶は連日模擬仕合を繰り返してきた。その試合数驚愕の187仕合!トーナメント開催発表から本日までの五か月間、調整を続けてきた。ヘヴィー級対策は万全だ。

摩耶「(慣れっこなんだよね。デカい奴との闘いは。)」

繰り出されるラッシュを避けつつ隙を見て先ほどダメージを与えた左ひざに再び蹴りを放った。真っ向からの打ち合いを避け、一点から崩していく。

アダム「チィッ(ちょこまかと!)」

ビリビリと痺れにも似た痛みが左ひざに蓄積していく。そしていざ攻めようと拳を繰り出すと摩耶はすぐに距離を取ってしまう。

コイツ……噛み合わねえ!
上等……無理やり噛み合わせてやるよ!!

アダムは力いっぱい踏み込み自分から間合いを潰して摩耶の顔を斫るように左拳を振った。対して摩耶は頭を身体ごと左に振って避ける。

OK~!抉りやすいPERFECTだ!

力任せと見せかけて冷静にアダムは右手のひとさし指と中指を立てて振り下がっている顔面へと差し込んだ。

目玉はもらっーー!!?

振り抜いた腕が空を切る。摩耶はそのまま深く横倒れになって目つぶしを避けた。そのまま右腕で地面を打って身体を支えてアダムの両足を蟹挟で捕え前へと絡み倒した。

城「上手い!」

関林「しゃあ!やったぜ金剛!」

バンッと巨大なプロレスラーが巨大な男の背を叩いて喜ぶ。

金剛「落ちつけ、関さん。わかってる。これで流れを決定づけた。ここから先は摩耶の領域だ。」
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