ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【4】

ー絶命闘技会ドーム:選手控室ー

床に座って大きく足を開き、右、左とゆっくりと身体を倒して柔軟を続ける摩耶。そしてその背中を押しているのは鈴猫である。

鈴猫「このぐらいで大丈夫かな?」

摩耶「んっ……いい感じ。」

控室のドアがノックされ、西品治が入ってきた。

鈴猫「あっ」

摩耶「先輩。どこいってたの?」

西品治「すまんすまん。ちょっと面白い見世物があってな。どうだ調子は?」

摩耶「よっと!絶好調だよ。」

ぴょんっと跳ねるように摩耶は立ち上がって笑顔とピースを向けた。

西品治「……なあ摩耶。」

摩耶「ん?」

西品治「何度も言うが、無理だけはするなよ?ダメだと思ったらすぐに棄権するんだ。」

摩耶「またその話?」

西品治「何度でもいうさ。お前は闘技者以前に可愛い後輩なんだからな。」

鈴猫「私も無理はして欲しくないよ。」

摩耶「ははっ、二人とも心配性だね。けどね、僕は悠君や金剛君と闘えるなら命でもかけられるから。それのついでに優勝もしてあげるから大船に乗ったつもりでいいよ。」

摩耶は二人の背中をポンッと叩いて控室からドーム中央に続く通路へと移動した。暗い道の先では眩い光が照らしている。

鞘香『さあさあ、それでは早速参りましょう!闘技者入場!!その格闘センスは無限大!小柄ながらどんな相手も確実に倒す!甘いマスクに騙されるな!若き武術マスター、トーナメント開幕に花を添えられるか!身長160センチ体重48キロ。闘技仕合戦績21勝0敗。企業獲得資産792億1200万。西品治警備保障&桜花フラワー所属摩耶!!』

摩耶「よっし!行っくよー!!」

【黒天白夜】摩耶

スポットライトを浴びながら鞘香に紹介されて観客に手を振る。その反対側の選手入場通路では対戦相手が様子を見ていた。

アダム「なんだありゃ?まだガキでしかも女みてぇじゃねぇか。」

ロナルド「摩耶。20歳の男で中国拳法使いだ。ああ見えて21戦負けなしの強豪だ。もっとも君の相手じゃあないと思うがね。」

ピエロメイクのボスバーガーの社長ロナルド原口は普段のどこかおちゃらけた顔つきではなく真顔で話す。

アダム「ほう、ケンポーが。OK~♪コックサッカー(ホモ野郎)に、身の程を教えてやろうじゃねえか。」

ボスバーガー代表闘技者:アダム・ダッドリー。

ロナルド原口はこの男の出会いとを思い出すと今でも震えが走った。。

アメリカはテキサス州。今、この地ではある協議がブームとなっている。ストリートファイト、プロモーターを介さず腕自慢たちが雌雄を決する野良試合である。

ストリートファイトのローカルルールは無数にあるが、寝技を廃し、打撃のみの攻防で決着をつけるのがテキサス主流のルールである。

全米で行われているストリートファイト。中でもテキサスのレベルは最高クラスといわれている。米国最強のケンカ屋が、テキサスを拠点としているためだ。

パンク・アボット42歳。テキサスの日で焼かれた肌に重圧な筋肉、この男の実力は、他のストリートファイターと明確に、確実に一線を画する。熟練した試合運び、痛烈無比な一撃。ルール無用の喧嘩殺法とはいえ精錬されたその技術はもはや「武術」。

過去には日本のとある企業に雇われ、大金をかけた闇試合に出場していたという噂もまことしやかに囁かれていた。この南部の地でまさにパンクは【絶対王者】であった。
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