ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー徳河豪俊の屋敷ー

朱金「ちょっとばかし遅かったみたいだな」

想「そのようですね」

ここ徳河豪俊の屋敷では北町南町の両奉行が神妙な面持ちで顔を見合わせていた。南北奉行所が協力して行った強制捜査だったが、踏み込んだ時にはすでに屋敷はもぬけの殻であった。

真留「遠山様。屋敷内はくまなく探しましたが残っている者は一人もいないようです。」

朱金「おう。ご苦労さん」

往水「逢岡様、こっちも証拠品の押収は大体終わりましたよ」

想「ご苦労様です。」

朱金「天狗党の黒幕が徳川豪俊であることだけは証明されたかな」

朱金は屋敷に残されていた天狗の面を取り上げた。

想「残された証拠からもそれはほぼ間違いないと思います。中村さん」

往水「はい、何でしょう?」

想「裏の蔵を調べてみてくれませんか」

往水「え、あたしがですか?」

想「はい。あなたのセンとリツの力を貸して欲しいんです。ちょっと気になる匂いがしたものですから」

往水「ああ、センとリツが必要ってことなんだったら、刀ごとお奉行にお貸ししますよ」

セン・リツ『『ピーッ!!』』

往水「いたいいたいいたいいたい…」

想「ではお願いします」

往水「はい…」

朱金「結局、明日の全校集会の会場で迎えうつしかないのか」

想「これまでの天狗党の行動目的が示威行動であったのなら……。今回の大行動もその効果が最大となるような場所や時間が設定されているはずです。つまり多くの生徒の集まる全校集会の会場で行われると考えるのが妥当でしょう」

朱金「問題は一体何をやらかすつもりなのか……」








ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「おぉ。」

戸を開いて外に出た途端。声を上げてしまった。
前の通りを行き交う人の多さに驚いた。

新「おはよう、悠」

悠「おう、おはよ。」

新「あれ!悠どうしたのいつものチンピラっぽい格好じゃなくてうちの制服じゃん」

悠「誰がチンピラじゃい。いつもの格好じゃ今日は目立つだろ。まぁ…仕込みはしてあるし……っか、今日は銀シャリ号じゃないのか」

新「今日は学園全体の道に交通規制がかかってるからおうちに置いてきたんだよ」

悠「なんだ、馬も交通規制を守らないといけないんだな」

新「そりゃそうだよ。身体が大きいから人を轢いちゃったり、踏んづけちゃったりするもん。学園内で銀シャリ号はバイクと同じあつかいなんだよ。」

悠「それにしても朝からすごい人手だな。」

いつもは穏やかな通りが今日はまるで歩行者天国のような賑わいだ。

新「そうだね。でも今日は全校集会の日だからね。」

悠「ほむ…いや、ふむ。これが全校集会の人手なのか。本当に島中から生徒が集まって来てるんだなぁ。」

新「さ、行こう、悠。人が多いから普段よりも道が混雑するよ」

悠「あぁ、そうか。」
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