ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー闘技号:船内男子トイレー

手洗い用の蛇口に両手を伸ばすと水が自動で流れだす。バシャバシャと音を立てて両手をしっかり洗いエアーブロウで乾かしながら髷を結った男が呆れたように言う。

「闘技者の座を譲れだ?寝言は寝ていえバーカ。」

企業序列第14位:禍谷園【土俵の喧嘩屋】鬼王山尊(きおうざんたける)。

トイレの中は酷い有様で刺客として襲ってきた者たちは床や壁、小便器に叩きつけられ壊れた水道管から拭きだしている水と流れた血が混ざって赤く染まっている。

鬼王山は横目で個室の方を一度睨んでからノシノシとトイレから出ていった。

個室の一番奥だけドアの鍵のところが『LOCK』の表示。誰かが居たのだ。

顔の堀が深い男が便器に腰かけて笑った。

「(あの男、強いな……さすがは闘技試合まだ見ぬ猛者が蠢いておるわ!)」

企業序列第21位:ユナイテッドクロージング【測定不能(十種競技金メダリスト)】室淵剛三。


華やかな船内からうって変わり、暗く殺風景な第三倉庫に巨大な鳥かごのような檻が設置されその中心に首、手足、身体を鎖で繋がれた者が居る。

十王通信社長の高田清助が部下を二人連れてにこやかに話しかけた。

高田「いやあ、待たせたねぇ。もうじき君を自由にしてやれる。」

檻の中の男がわずかに動いた。ギチィ、ギッギギギと鎖がこすれる音がする。

「……君たちは勘違いをしている。私がその気になれば君など瞬きする間に殺せる。用心棒の二人も合わせてね。」

ハッタリではない、この男ならできる。

高田「だが、君はやらない。そうだろう?」

いつの間にか手足を拘束していた特殊な錠から両腕を抜いて。拘束服のフード部分をとった。

「ん、まあね…嫌いなんだよ。約束を破るのはね。」

史上最悪の死刑囚

企業序列第12位:十王通信【血染めの象牙】坂東洋平


紅は自室に戻って時間を持て余していた。眠たくはないがパーティーホールにもどって飯を食うほど腹も減っていない。なので仕方なく、無心でバッドを振るう。

紅「フッ!フッ!」

企業序列ランク外:SH冷凍【紅】紅(赤木皇)

紅の部屋の上の階、ひと回り豪華な客室ではソファーに腰かけた倉吉理乃が話している。

理乃「いいこと二人とも?もうじきトーナメントが始まるけれど、期間中は常に気を抜かないようにね。音市、美音。私と雲山のフォローよろしく頼むわよ。」

「「了解」」

揃いのパンツスーツ金髪で後ろ髪をお団子にまとめ櫛を刺している美音と褐色の肌に黒髪ショートで前髪に赤のメッシュが入っていて首にチョーカーをつけた音市が返事をする。

雲山「…私の方は問題ありません。二人は理乃の補助をしてください。そして雷太郎君と風太郎君、護衛の方よろしくお願いします。」

雷太郎「異才」
風太郎「承知」

普段とは違い風来コンビもダークスーツに身を包んで返事をした……。

ただ、この護衛組四人は心の中で同じことを突っこんでいた。

『『『『その体性で指示出されてもなぁ~…』』』』

雲山はソファに寝転がり理乃の膝に頭を預けて頭を撫でられている。

企業序列第25位:ゴールドプレジャーグループ【鬼神】百目鬼雲山
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