ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー闘技号:船外通路ー

片原会長の黒服こと守護者の二人が見回りとして通路を歩いていると顔の中心に×の傷がついている男がふと妙な物を見つけた。

傷の黒服「何だこりゃ?」

一緒に回っていた鋭いモヒカン頭の黒服もそれを見た。

モヒカン黒服「ん?」

傷の黒服「これは……」

モヒカン黒服「傷……穴……?」

船の壁に横に四つ並んだ丸い穴、縦に四つ並んだ穴、引き裂いたような傷がついている。

傷の黒服「鉄板に穴があくかね普通?」

モヒカン黒服「あかんだろうな……。もしかしたら腐食して脆くなってたのかもな。」

傷の黒服「なんだっていいさ、さっさと塞いじまおう」

守護者たちが話している少し先の暗がりの廊下二人の男が歩いている。眼鏡をかけた男が涼しげな顔で、その隣にいる銀髪の男か呆れたように言った。

崇「あまり変なことをして船を沈めるなよ。」

本郷モータース:【社長秘書】虎狗琥崇

氷室「すこし高ぶってしまいましてね。というか、あのぐらいで沈むわけないじゃないですか。」

企業序列第23位:【抜く者(ハンドポケット)】氷室薫


船内のホールに繋がる廊下、背の高い神父服の男にさらりとした金髪に透き通るような白い肌をした少女がにこやかに話しかけている。

金髪の少女「いよいよ仕合ね。お兄様ならきっと優勝できますわ。」

神父「ハハハ…プレッシャーをかけないでおくれ、エレナ。それに大切なのは勝敗だけじゃないよ。あらゆる苦難を耐え抜き、なお平静を保てる穏やかな心を養うことの方が、私にとっては重要さ。」

企業序列第20位:セントリー【撲滅する牧師】茂吉・ロビンソン

……とその妹エレナ・ロビンソンはとても穏やかな笑顔で語りあっている。

「おい、牧師が居るぜ?」

「あいつも闘技者なのか?」

「さあ?でもよ……連れの女の子はちょっと可愛くね?」

「だよな?俺も気になってたんだ、声かけてみるか?」

背後でそんな声を聞いた茂吉は振り向いた。その顔は今さっきまで穏やかな笑顔だったものとは違い血走った眼をギンッと見開き葉をむき出しに歪めた口といくつも浮き上がっている青筋。

テメーらブチ殺すぞ!

声は出してなくともそう語っている。そして、下手に近づけば本当に殺される。

「「(どっ……どこが穏やかな心だ!!??)」」

エレナ「どうしたのお兄様?」

茂吉「いや、何でもないよ。ハハハッ」

その顔は一瞬で元の笑顔に戻っていた。


闘技号ある一室、ペタッペタッペタッペタッと奇妙な足音とエームオーシーケーイ―ワーイ♪という歌が響いている。

その足音の主、アヒルのような着ぐるみがペタペタと踊りながらサッと手(羽)を上げていった。

アヒルの着ぐるみ「モッキー♪準備はいいかい?」

「黙れ」

アヒルの着ぐるみ「!?」

「夢の時間は終わりだ。」

頭だけネズミの被り物をかぶった者がそう告げた。

企業序列第8位:栃木ディスティニーランド【夢の国から来た男】根津マサミ
96/100ページ
スキ