ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー闘技号:カジノエリア出入り口ー

魏一族の中でも異端の存在はある意味異端の存在である小鳥遊悠に絡みついていた。

悠「……なんっていった?」

「お前の子を産みたい。爺様が言っていた。強い子孫を残すことが宗家の指名。一目見て分かった。お前は強い。私は迦楼羅(カルラ)。お前、私の夫になれ。」

パッと見るだけなら大胆に男女が抱き合っているような一場面。

凛「えーと…………だれかこの状況を説明してくれませんかね…。」

紅「……いや…プロポーズ?」

久秀「なんでとつぜん求婚……?」

城「さ、さぁ……?」

久秀「あんた、聞いてきなさい」

城「ええ?!……あ、あのーか、カルラさん?どういうことか説明を…」

迦楼羅「私と子を作ろう!!」

当然というか、まったくの無視で迦楼羅はまたも叫んだ。


おおよそ理解不能な突然の求婚に、外野は大いに混乱した。だが、本日この場で最も混乱していたのは……この男、小鳥遊悠である。

悠「(子?夫?おれが?こいつは何を言ってるんだ?)」

迦楼羅「?」

停止した悠の反応の理由がわかってないのか迦楼羅も首をかしげた。

城「(あ、あの、悠さんが…戸惑ってる)」

迦楼羅「さあ!子を作ろう!お前と私の子!きっと最強の戦士になる!今すぐ夫婦になろうッッ!!」

悠「……」

そう叫び続ける女の脇を両手でつかんだ。そして猫でも持ち上げるように自分から前に引きはがす。そして、地上に下ろして見下ろした。

頭一つ分の身長差ぐらいだろうか。例の白目と黒目が入れ替わったような魏一族特有の目で見上げてくる。

迦楼羅「どうかしたのか?」

悠は何も言わず後ろに向くと一気に駆け出した。この感じ、非常に似ている全力で駆け出していく悠の脳裏に「臥劉京(がりゅー)」の姿が過りつつも逃走を開始した。

城「ちょっ!悠さんどこ行くんですかー!?」

凛「悠さんどうしたんスかね……?」

久秀「おそらく状況があまりにも理解不能なのと、なにか似たようなことを思い出して逃げ出したんでしょうね。」

紅「あーあ、がりゅーの嬢ちゃんか。確かに似たようなことやってたもんな。」

迦楼羅「おいっ待てっ!!」

追いかけようとした迦楼羅だったが背後からの声に停止した。

「探したぞカルラ!」

「勝手に出歩いたら駄目じゃないか。」

紅たちも振り返ると魏一族の人間が二人立っていた。一人はパーマ質の黒髪の30代後半ぐらいの男:魏ホリス、もうひとりは20代ぐらいで紅と同じぐらい金髪の男:魏怜一。

迦楼羅「ホリス…怜一…」

怜一「さあ、戻ろう。じい様が心配している。」

カルラは素直に戻っていく。するとホリスがジロッと例の独特の瞳でにらんできた。

紅「チッ」

いやな目つきしてやがる。敵意じゃねぇ。獲物を見る目だ。

その男がづかづかと近づいてきたと思うとペコッと頭を下げた。

ホリス「身内がご迷惑をおかけしました。」

久秀「いや、まぁ……迷惑ではないと思うわ。たぶん、うん。」

紅「(でも意外と礼儀正しいな、おい。)」

これでとりあえずの騒動は終わりかと思ったら、迦楼羅がゆらっとこっちに向いていった。

迦楼羅「名前…あいつの名前、なんていうんだ?」

名前も知らない相手にいきなり求婚して子供を産みたいといったのだ。改めて考えると相当ぶっ飛んでいるが、それ以上にカルラという女は美少女だ。

それで何となくイラッとした。

紅「お前の花婿の名前か?怪人タラシ男だ。」

凛「小鳥遊悠さんです。」

城「「小鳥遊」は小鳥が遊ぶで「悠」は悠久の悠の字です。」

迦楼羅「タカナシ……ユウ…………悠か……」

紅「「タラシ」はカタカナだぞ」

凛「紅さん、スルーされてます」

迦楼羅「悠、悠……悠!!悠に伝えてくれ!「また会おう」って!」

とびっきりの笑顔を残して迦楼羅は礼一とホリスに連れていかれた。

紅「悠のほうはもう会いたくないんだろうなぁ……。」

凛「そういえばどこに逃げたんスかね」

久秀「はぁ……城、凛、ちょっと探して見つからなかったら部屋に戻って休みなさい。久秀ももう部屋に戻るわ」

「「わかりました(ッス)」」

久秀「アンタももうちょろちょろしてないで部屋に戻んなさい。それと貸し一つよ。」

紅「んー、そうだな。なんか食ってから部屋もどるかな。」
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