ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー某地方都市ー

東京からおよそ5000キロ某地方都市……。

カンカンッと打ち木の音がこだまする。法被を着た三人組の若い男が火の用心を唱えながら見回りをしていた。三人は黒い瞳を宿している。

主婦「あ、魏さん。」

制服の女性「夜回りご苦労様です。」

茶髪の法被「ありがとうございます。夜道ですからお気をつけて。」

黒髪の法被「クソー。こりゃナイターには間に合わねぇな。」

カンッと打ち木をひと鳴らししつつぼやくと金髪の法被がいった。

金髪の法被「当番なんだから仕方ねぇよ。終わったら一杯ひっかけに行こうや。」

そういいながら巡回ルートを進んでいると制服を着た警官がにこにこ近づいてきて話しかけた。

「おや、魏の皆さん!」

黒髪の法被「おお、駅前交番の新人さん。」

敬礼のポーズをとって新人はいった。

新人警官「いつも夜回りご苦労さまです!皆さんの日ごろからのご尽力、我々も非常に感謝しております!今後ともよろし……」

「く」の言葉が出る前に金髪の法被が懐から銃を取りだすと弾いた。サイレンサーにより音は抑えられているがほぼゼロ距離で発砲されたため顔の半分が吹き飛んでいる。

黒髪の法被「……いやいや、お前何してんの?」

金髪の法被「いやぁ…チャンスだったからつい……コイツ、地元のチンピラ使ってクスリ捌いてたらしいぜ。」

黒髪の法被「なんだ「標的」だったのかよ。警官がクスリねぇ……世も末だよ、まったく。」

茶髪の法被「とりあえず清掃しないとな。手伝いを呼ぶか。」

金髪の法被「悪りぃ!よろしく頼むわ。」

茶髪が携帯で連絡を入れるとすぐに宇宙服のようなものを着た集団がやってくると死体を片付け飛び散った肉片や血液を清掃していく。

魏一族。

この地方一の有力一族にして裏世界に名を轟かす暗殺集団である。


標的の片付けと見回りが終わると三人はREDROOMというスナックに集まっていた。他に二人ほど男女ペアの客が居るが黒い瞳をもっている。

小太りの男「ナイターどうなってた?」

おかっぱの女性「8回表で広島が2点リードしてたよ。」

金髪「いやみんな、みんな手伝ってもらって悪かったな!ここの払いは持つから心行くまで飲んでくれよ。」

茶髪「よっ!太っ腹!」

黒髪「景気イイね~」

今のさっき人を一人殺したという雰囲気など皆無で酒を飲み談笑していると、「あの話」が話題に上がった。

金髪「今頃あっちはどうしてるかねぇ?」

黒髪「ああ、闘技絶命トーナメント?」

金髪「うまくやってるといいけどな」

茶髪「問題ねぇだろ。爺様がついてるんだから。」

金髪「いや、あの四人はなんも心配してないんだけどさ……」

黒髪「ああ、カルラの方ね。」

金髪「あの子まだ学生だろ?修羅場に連れてって平気なのか?」

黒髪「う~ん……教育上よくねぇだろうなぁ……。」

茶髪「オレあの子とほとんど話したこと無いよ。あの一家東京住だし」

話しているとカウンターの奥から着物の女性が煙管片手に近づいてきた。勿論その瞳は黒。

着物「あんたらそんな心配いらないよ。カルラは正真正銘の化け物さ。」

金髪「姉貴…」

黒髪「あの子、そんなに強いのか?」

着物「そうさね。分かりやすい例を出そう。今、この場に居る全員でカルラと闘るとする。10秒以内に皆殺しにされるだろうね。」

「「「!!?」」」

カルラを舐めちゃいけないよ。

あの子は魏一族でも異端の存在。

アタシらとは次元が違うんだよ。
91/100ページ
スキ