ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー闘技号:廊下ー

薄暗い船内廊下で男の嗚咽が響く。

黒道着「う……うぅ……。ウぅぅ……うう……。」

乾「……」

両手で顔を覆いポタポタと滴を落とし続けている男の下で【海一証券】代表闘技者:乾町三は大の字に倒れてこと切れていた。

黒道着「うっ……嬉しぃ~……これで好きなだけ人を壊せる。闘技仕合…最ッ高~♪」

その顔はこれでもかというほど目を口を大きく開き涙とヨダレがボタボタとこぼしながらの笑顔だった。

~~

夜の潮風がしっとりと肌を撫でる公園エリアで、百目鬼雲山は倒れんばかりに腰を折って頭を避けだ。

雲山「理乃……すまんっ!22秒も待たせてしまった!」

足元で横たわるドクロマスクをかぶった男は人体の形はとどめている者の手足は砕かれ顔もマスクごと中央が陥没していた。

理乃「雲山、頭をあげて。私は気にしていないわ。」

夜の女王は視線をチラッと刺客だった者に視線を向ける。

これでおわかりかしら?小細工は通用しなくてよ?という顔を刺客の服に仕掛けられている小型カメラに向けた。

豪華な客室、テーブルには六台のディスプレイが設置され、その一つに倉吉理乃の強かな笑みが映し出されていた。

「……この女、カメラに気付いているな。」

「……ああ、そのようだな…倉吉理乃、相変わらず食えん女だ。」

「始末するか?」

「構わん。放っておけ。それにしても…結局奪えたのは2枠か。高い報酬を嫌ってやったというのに、役立たずどもめ。……まあよいわ。連中の手のうちが見られたし良しとしよう。これで我が社の枠は5つ。ユリウス、お前を含めれば6枠だ。盤石の構えよの。」

~~

場所は変わって船内のカジノスペースは眩いほどに煌めき夜だというのに人の出入りが止むことはなかった。

凛「城さん、ジュースお待たせしました~」

城「あ、どうもありがとうございます。」

有名フード店のロゴが印刷された紙カップを受け取る。

凛「……長いっスね。」

城「……長いですねー。」

凛「いつになったら終わるんスかね~松永さんのお説教。」

カジノの出入り口で腕を組み仁王立ちした久秀は不機嫌な顔で正座で座らされている紅と悠を見下ろしていた。

久秀「…………信じられないわ。まず、お前!カジノで大負けして身ぐるみ剥がされるなんて馬鹿かっ!!それでなんで久秀が肩代わりしなきゃいけないのよ!!」

紅「スミマセンデシタ」

紅の大負けの敗因はルーレットで赤にしか賭けないという無謀行為。途中なんどか当たってしまって調子に乗ったのも原因ではあるが……。

久秀「それに悠!」

悠「おれは負けてないんだけど……。」

そう、負けてない。小鳥遊悠はむしろ何故か怖いくらい大勝ちしたのだ。

久秀「目立ってんのよ!!しかも女を侍らせて!なに考えてんの!盛るなとはいわないけど、ヤルなら部屋に呼べっ!」

悠「盛ってねぇし、今回はあの女たちが勝手に寄ってきたんだ。」

久秀「とにかく!!アンタらは狙われてる立場なのよ!!軽率な行動は慎めっていってるのっ!!」

「「モウシワケゴザイマセン」」

凛「(こんなところで説教してる方が目立ってる気がするっスけどね。いや、でもホント緊張感のない人たちッスね~……ん?)」

何か視線を感じて振り向いた先にはファー付きのフードをかぶった何者かがニィィッと邪悪な見えを浮かべていた。
89/100ページ
スキ