ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

はな「ありがとうございましたです」

前の客が席を立ち、次の客のために卓を片付ける。

悠「おっと…」

しゃがんで卓から茶碗を下げようとして刀の鞘の先が床に干渉してしまう。
こんな些細なことで今日から刀を持つことになったのを改めて実感する。
正直邪魔…。

「おい。茶を所望だ」

悠「あ、はいはい。ただいまお席の準備をさせていただきますので」

表から声がしたので迎えに出る。

悠「おっと……」

客の姿を見て思わず声をあげそうになってしまった。客は大きく着崩した制服の胸元もあらわな長髪の剣士。谷間の深さは新超え。
小鳥遊堂には珍しい妖艶な雰囲気を漂わせた客だった。

美剣士「なんだ、この店は店員が男なのか?」

おれが表の縁台席を案内しようとすると、彼女は開口一番に不満を漏らした。

悠「えっと…」

美剣士「何だ、つまらん。入る店を間違ったな」

悠「まぁまぁ。茶はオススメですよ。まずは一杯、飲んでってくださいよ」

何だかめんどくさそうな客な気もするけど、ただでさえ客が少ないんだから必死にもなる。

美剣士「正直、茶にはさほど興味がない。美しい婦女子を愛でるために私は茶屋をたずねるのだ」

何だよ、この学園は…朱金といい、この女といい、女好きの女ばっかりなのか?

悠「…いや、看板娘も店員もいますよ。」

美剣士「なら、なぜ最初からその娘をださないのか。お前の首の上に乗っているものはなんだ?カボチャか?海草のへばりついた」

初対面でえらいいわれようだ。

悠「わかりました。お茶は…」

はな「?」

悠「看板娘のほうに出させますので」

美剣士「まぁいいだろ。ほうじ茶を一杯もらおう」

悠「ありがとうございます。しばらくお待ちくださいませ」

なんとか注文をとって厨房に戻る。
おれはお茶を淹れる準備をしながら、いつものようにバックヤードで寝こけている新を起こす。

新「ふわ?」

悠「お前に仕事をあたえる。この茶を表のお客さんに出して来てくれ。」

新「ふぇ、なんであたしが?」

悠「なんか危なそうな客…もとい、変わった客でさ。かわいい子はいないかってきくからさ、つい看板娘がいるっていっちゃったんだよ。」

新「かわいい子?看板娘?にへへへ♪」

悠「その顔はするなよ?」

新「ぶうう」

悠「よし、淹れたぞ。これを持っていってくれ」

新「は~い」

悠「こぼすなよ」

新「分かってますよ~だ」

はな「あの悠さん…」

悠「はなちゃんはあの客が帰るまでバックヤードで休憩しててくれ。なんか嫌な予感がするから。」

はな「は~いです」
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