ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー闘技号:客室ー

闘技号でも豪華な作りのある客室、ひとりの男がグラスに注がれた褐色の液体を飲み干すとダンッとテーブル叩き置いた。

「今こそ革命の時。旧態依然とした闘技会は生まれ変わるのだ!!」

覚悟しておけ片原滅堂。貴様の時代は終わりだ!

「「「……」」」

「いよいよだぞ貴様ら。闘技者を打ち倒し、枠を奪い取ってくるのだ!!」

一人はやたらぴっちりとした男性用のアオザイを着た者、一人はドクロのマスクをつけた者、ひとりは深くニット帽をかぶった者、ひとりは全身を包帯で締め上げた者、ひとりはボロボロの黒い道着を身に着けたもの。

そして五人の刺客に命令を下す男の背後で巨体に異常なほどの筋肉をまとった男が静かにたたずんでいた。


~~


PM9:00到着まで後8時間30分

闘技号の廊下を悠と紅が闊歩している。

紅「いや~助かるぜ。船内の飲食は全て無料なんて闘技会も太っ腹だよなぁ!腹も膨れたことだし、ちょっと遊んでいくか?」

悠「遊ぶ?」

紅「おう!3階にカジノがあるらしいぜ?ちょっと小遣い稼ぎに行こうや!」

悠「カジノまであるのか……。」

紅「らしいぞ。行ってみようぜ、ヒマだしよ。」

悠「あー……そうだな。いってみるか。」

そう話しながら歩いていく悠と紅が角でノッポとチビの二人組とすれ違った。

「……!?」

紅「カジノっていえばルーレットとかあるのかねぇ?アレッて数字を当てればいいんだろ?」

悠「ピンポイントで当てるより赤&黒(ルージュ&ブラック)で狙った方がいいぞ」

二人の背後ですれ違ったチビがその背中を見つめている。その瞳は黒目と白目が入れ替わったような魏の一族の象徴である黒眼。

ノッポ「どうした迦楼羅(カルラ)?」


~~


場所は変わって【配電室:立ち入り禁止】と書かれた扉の中、大型の機械が唸る薄暗い室内で二人の人間が密会していた。

【小鳥遊製薬】代表闘技者:金剛がいった。

金剛「わざわざ呼び出して悪かったな?」

摩耶「ホントだよ~。ご飯の途中だったのに」

【桜花フラワー&西品治警備保障】代表闘技者:摩耶は左手に料理が盛られた皿、右手に骨付き肉をもって不満げに言う。

金剛「……いったん喰うのやめてくれないか?」

料理を食べ終わるのをまって金剛は改めて呼び出した訳を話した。

摩耶「不自然?」

金剛「ああ、柏……うちの社長に確認したところこれまでの闘技絶命トーナメントでは、優勝社の代表が闘技会会長に就任するという規則が定められていたそうだ。だが今大会、優勝社に与えられるのは「会長指名権」だ。」

摩耶「ふーん……。そう聞くと全く違うね。」

金剛「かし……社長が言うには」

従来の方式ならトーナメントはあくまで個人戦。だが、今大会のルールでは共謀や買収、脅迫といった行為が介在する余地がある。

トーナメントのルール改正をできるのは現・闘技会会長片原滅堂だけ。不可解。なぜこんな不自然なルール改正を?デメリットの方がはるかに大きい。

摩耶「もう柏さん呼びでいいと思うよ。それより、僕に何か言いたいことがあったんじゃないの?」

金剛「ああ……いるらしいんだよ。柏が言うには限りなく黒に近いトーナメント参加社が。」

恐らく何かを仕掛けてくるとしたら奴しかいない。もっとも…まだ確たる証拠は……

摩耶「……え?続きは?結局どの会社が怪しいの?」

金剛「早速か。」

金剛の視線は摩耶ではなく、その背後。タンクトップにニット帽をかぶった男と上半身を包帯で締め上げて男が近づいてきている。

ニット帽「見つけたコイツらが闘技者だ。さっさと潰して枠をもらっちまおうぜえーと……?」

包帯男「……」

ニット帽「……どうでもいいかお互いの名前なんて」

出入り口を遮るように刺客が立ちふさがる。

金剛「まいったぜ。人目を避けたのが裏目に出たな……。」

摩耶「いや?ちょうどよかったよ。船旅にもちょうど飽きてきたとこだったしね。気晴らしに運動しようよ♪」

ニット帽「おいおい。こんなガキかよ。」

包帯男「……」
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