ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー闘技号:船内廊下ー

時間は「現在(いま)」に戻り、片原会長の説明が終わって義伊國屋書店の会長、大屋健は自社の代表闘技者と共にある男に相談があると廊下へと呼び出されていた。

義伊國屋書店代表闘技者:氷川涼(ひかわりょう)。下品ではない程度に焼いた肌と銀髪、鍛えられた身体つきはどこかのサーファーにも見えなくもないが、本職はバーテンダー。ゆえに格好も黒のズボンに白いワイシャツと小さな蝶ネクタイで清潔感のある整った格好だ。

その二人に呼び出した男はあることを話すと大屋は驚きの声をあげた。

大屋「な、何ィ!?」

氷川「……金田、お前、ふざけてんのか?」

二枚目の顔に怒りの影がよぎって相手を睨む。

末吉「いえいえふざけてるなんてとんでもない!もう一度いいますけど氷川さん、代表闘技者の座を私に譲ってもらえませんかねー?」

大ホールで将棋をしていた男。金田末吉がぺこぺこと頭を下げていった。

そもそも金田末吉は大屋が趣味で行っている将棋サークルで仲良くなり、大屋が自分の経営するBar(ここで氷川が働いている)に飲みに誘ったその流れでこの闘技会にまでついてきた者だ。

大屋「おいおい!なにを言いだすんだよ金田。今さら闘技者を変えるなんてできるわけ…」

末吉「できます。」

末吉ははっきりといいきった。

大屋「えっ?!」

先ほどの片原会長の説明、二点ほど引っかかる箇所がありました。

一点目、「代表闘技者は「決戦の地」に到着してから登録する。」

末吉「これって裏を返すとこういうことですよね?「目的地に到着するまで代表闘技者の交代は自由」」

大屋「いやいやいや!片原会長も言ってただろ!?船内の死闘は禁止だって!!」

末吉「ハハハ。大屋会長。ひとの話はちゃんと聞かないとダメですよー。片原会長が禁止といったのは、「闘技者同士の戦いだけ」ですよ。これが二点目です。」

この場合の「闘技者」とは32社代表選手(仮)のことです。乗船の時に申告した。

【松永&小鳥遊(略)商事】代表:悠
     VS
【皇桜学園グループ】代表:刹那
     【×】

代表選手の戦いは禁止されていますが、それ以外の戦いはまったくもって問題ありません。

【義伊國屋】代表:氷川
     VS
【部外者】金田
    【○】

末吉「その証拠にほら、あそこをご覧くださいな。こっちで私闘の算段をしてるってのに、護衛者連中が止めに来る気配がないでしょう?「闘技者同士「以外」の対決は勝手にどうぞ」って態度ですよアレ。」

末吉が指さした方では確かに扉の前で数人の黒服が立っているがまったくの無反応である。

大屋「こりゃあ参ったな…まさか船内ルールにこんな穴があったなんて…」

そう……この「抜け穴」は不自然すぎる。

あの闘技会がこんなザルなルールを見逃すわけがない。とすると、この穴は意図的にあけられたもの。何のために?

これはまるで……皆を試しているような……。
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