ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー皇桜女子大学:二号館大講堂-

異変に気がついた紫苑と智子だったが、それ以上の異変が闘技者の、小津に起こっていた。

小津「……貴様ァ…貴様は一体…なんなんだ?」

ねじ曲がっている……。否、捻じれているのだ。何が?弾かれた小津の右腕の二の腕から指先までゴムの束を捩じり固めたようになっているのだ。

美青年「……」

青年は何も言わずに小津を目で捉えている。

小津俊夫はただの力自慢じゃない。人並み外れた「怪力」に加え、卓越した「格闘技術」と冷静沈着な「頭脳」も併せ持つ、【三本柱(トータルファイター)】

紫苑「そんな小津だからこそ……たった一度のコンタクトでも痛感しているはずだ。……底が知れないと。小津!もういい、下がれ!!」

小津「……ニッ」

理事長、そのご命令には従えませんな!!不肖、小津俊夫……試験官の任を全うする所存!!25年に渡り我が筋肉と頭脳に誓って!!

小津は前傾姿勢を取って突撃する。

智子「小津先生!!」

紫苑「……」

小津「喰らええええい!!低能小僧ォッッッ!!」

体当たりとも残った右手でのぶん殴りとも思える力任せかつ豪胆な一撃を見舞う。


ギュルッ


小津の笑顔、歯を見せて満面の笑みが紫苑と智子が居る「180度後ろ」に向いた。

智子「小津先生っ!!??」

屈強な肉体は正面、頭部だけが背面、頭だけが捩じられ、倒れた……。

青年はそれを見届けると紫苑たちの方へと向いた。

想定外の結果に終わった試験。小津にブッ倒された受験者と幸い命に別状はないが緊急搬送となった小津俊夫たちが運び出された闘技場に残ったのは紫苑と智子、そして例の青年だ。

紫苑「担当直入に聴くよ?どこでこの事をかぎつけた?」

青年は白いカッターシャツに袖を通すといった。

美青年「「口に戸は立てられない」と、だけ」

紫苑「じゃあ乱入した目的は?やっぱり闘技試合の売りこみかしら?」

美青年「会いたいんです」

紫苑「「会いたい」?」

美青年「最近…「古い知人」が闘技試合に出ると聞きましたね。どうやら「彼」が色々と勘違いをしてるみたいなんです……。積もる話もあることだし久しぶりに会いたいなぁ。」

智子「!!?」

微妙に話がかみ合っていない、智子は綺麗な顔から発せられる不気味を通り越して悍ましい迫力と声に背筋に寒気が走った。

紫苑「……よし。今日からアンタはうちの闘技者だ。」

智子「理事長!?(よ、よろしいんですか?簡単に決めてしまって…)」

紫苑「気を付けな松田。油断すると喰われるよ。」

智子「え゛っ!?」

毒、それも猛毒であるのは一目瞭然。でも…こいつを制御で来たら、強力な武器になることは間違いなし。

美青年「話しはまとまりました?」

決まっている。毒を食わば、皿まで。

紫苑「ええ、おかげさまで。ま、よろしく頼むわね。あ、そうだアンタ名前……」

差し出された紫苑の手を取ると美青年は名乗った。

刹那「桐生刹那(きりゅうせつな)です。以後お見知りおきを……。それで?僕のデビュー戦はいつですか?」

紫苑「少しだけ待っときなさい。もうじき闘技会に「うねり」が起こる。特大の奴がね。うねりに乗ってもらうよ、桐生。」
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