ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー闘技号:中央大ホールー

片原会長の発表が終わりパーティーは再び賑やかさを取り戻していく、そんな中でも本戦参加のオーナー陣と闘技者たちは少し顔つきが変わってきている。

紫苑「兜馬ァ。」

兜馬「ああ、奏流院理事長久しぶりですな。梔くんも一緒のようで。」

梔「どうも。」

悠「紅、お前、梔姉さんたちと居たのか。」

紅「ちょっと話してるうちにあのじい様の演説が始まったんだよ。」

久秀「挨拶はその辺りにして……兜馬社長、奏流院理事長。さっきの会長の説明、どう思います?」

兜馬「ほう、君も気がついたか。」

紫苑「…動くと思うか?」

兜馬「どうかな?」

久秀「闘技会は野心家が多いみたいですものね。」

悠「野心家はお前の事だろ……。」

久秀「悠、何か言ったかしら?」

紫苑「ほーう……小鳥遊悠…」

奏流院は悠の前へと移動してしげしげとその顔を見つめた。

智子「わぁ、イケメン♪」

紅「おいおい…。」

悠「えーと、誰だ?」

紫苑「会員のひとりさ、間近で見るとますますイイ男だねぇ。うちの桐生が追いかけまわすのも分かるわ。」

悠「桐生?」

紫苑「なんだい。アンタ……知らないのか?うちの闘技者だけど、ずいぶんとアンタに執着してたんだけどね。桐生刹那って男だよ。」

悠「桐生……刹那」

紫苑「どうやら本当に知らないみたいだね。まぁ、いいわ。これだけはいえる。アイツ(桐生)は強いぞとてつもなく、な。奴と闘うんならそれなりの覚悟をしとくんだな。」


時間は遡ること数か月前……。

皇桜女子大学の二号館大講堂を囲むように一定の間隔である看板が設置されていた。

【職員採用試験会場】
【関係者以外立ち入り禁止】
【終日入館禁止】

その大講堂の中では屈強な男たちが殴り、蹴り、投げ、暴れまわっている。その様子を見降ろしているのがふたりの女性。

智子「ひ…ひどい…!まるで殺し合い……!?」

そうこぼしたグレースーツ女性、皇桜学園グループ理事長秘書(新人)の松田智子。

紫苑「これがウチの「裏」採用試験「闘技者採用バトルロイヤル」よ。合格者は教員か職員ってことにして雇い入れるの。これぐらいは頭に入れといてね。」

そう答えたのが皇桜学院グループ理事長の奏流院紫苑だった。

智子「はぁ」

紫苑「とはいっても、あーダメだわ。こりゃ話になんない。」

智子「「ダメ」とおっしやいますと?」

紫苑「採用試験の意味がなかったってこと原因はアイツ。」

タバコに火をつけながら紫苑は一人の男を指さした。

殴り合っている闘技者二人を纏めて殴り飛ばした焼けた褐色肌にムキムキの筋肉、キッチリとした七三わけの髪型をした男だ。

智子「人が紙きれみたいに……。」

紫苑「ったく…少しは加減しろっての。受験生を選別する試験官。アイツに任せたのは失敗だったかなぁ?当学園最強の闘技者、小津俊夫(おずとしお)。」

皇桜女子大学文学部英文学科準教授「兼」皇桜学園所属闘技者:小津俊夫

闘技試合戦績11勝0敗

小津「ヌウン!」

通称【蛮勇知将(インテリジェンスバーバリアン)】

智子「あの小津先生が闘技者だったなんて一番の衝撃でしたよ……。すごく穏やかな先生だったのに。」

智子は皇桜女子大OGだった。

紫苑「うん、今のが「素の小津」だな。アイツ世間体気にするから。」
76/100ページ
スキ