ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー闘技号:中央大ホールー

末吉「はい、詰みです。」

城「あああっ!これで五連敗何で勝てないんですかぁ!!」

将棋を始めてから数回は惜しいところまで行くものの結果は惨敗。城にしては珍しく悔しそうに吠える。

末吉「いやいや。お嬢さんもなかなかのお手前でしたよ。」

大屋「うーむ……惜しいところまではいってるんだけどなぁ……。」

まわりで観戦しているひと達の中でひとり、将棋の勝敗ではなく末吉を見つめている男が居た。

顔つきは小鳥遊悠にそっくりだが瞳の色は普通で髪の長さも後ろで小さく一束に結っている小鳥遊窈。

窈「(すごいな、彼。まるで相手の動きをすべて見透かしているようだ。)」

城「もう一局!もう一局だけ!」

大久保「俺ももう一局頼むわ!」


連れていかれた城の事も忘れて悠は並べられている料理をハシゴしながら食べていると声をかけられた。

久秀「あら、悠。」

悠「おー、久秀と……凛。」

凛「あれ?一瞬私の名前忘れてなかったッスか?」

久秀「ひとり?あのお嬢ちゃんはどうしたの?」

悠「アイツなら、その辺りで飯でも食ってるんじゃ……よぉ。」

悠は途中で話しを切って久秀と凛の後ろに居る男に視線を向けた。【小鳥遊コンツェル】社長、小鳥遊兜馬に……。

兜馬「久しぶりだな、悠。本戦出場おめでとう。」

悠「……出場権、勝ち取ってやったゼ?」

親子のやり取りとは言い難い空気を出して対面していると誰かが声をあげた。

「おい!あれ!上見てみろ!」

次々に声が上がる。

「片原会長だっ!!」

「なんで上に居るんだ!」

見上げた先、大ホールの頂上に片原滅堂が我々を見下ろしている。迫力のある声が降ってきた。

滅堂「待たせたのう皆の衆。それでは始めよう。これより今後のスケジュールを発表するぞい。」

騒がしかった大ホールはシンっと静まり、各々オーナー、闘技者そこにいる全ての人間が片原に視線と耳を向けた。

初見「(出たな……妖怪ジジイ。)」

兜馬「(片原……滅堂。)」

滅堂「ただ今よりおよそ27時間後、この船は「決戦の知」に到着する。」

久秀「27時間…。」

凛「長旅ッスねー。どこまでいくんでしょう?」

紅「おいおいまさか海外か?」

智子「私ハワイがいいなー」

紫苑「お前ら少し黙ってろ。パスポートもってねぇだろ。」

目的地を知っているのはごくごく一部の人間だけだ。

滅堂「決戦の知に到着後、闘技会会員の諸君にはトーナメント出場闘技者の登録を行ってもらう。選手登録を以て闘技絶命トーナメント正式エントリーとするでの。」

末吉「ほぅ。」

城「こ、これでどうですか!!」

大久保「城ちゃん!勝てる!勝てるで!!」

アルティメットファイターの大久保と城はもはや片原会長の話より将棋にしか目が言っていない。

滅堂「もう一点。船内における闘技者同士の死闘は固く禁じる。禁を破ったものには護衛者からの「制裁」があるでの。以上じゃでは引き続き船旅を楽しんでくれたまえ。」

末吉「(なるほどなるほど、これはまた……打ってつけだ。)」

城「ふーふー!」

大久保「勝てる!勝てるで―!」

末吉は駒を一つ動かすと立ち上がった。

末吉「すみませーん。野暮用があるのでちょっと席を外しますねー。将棋盤は好きに使っちゃってください。あ、それと詰みです。」

大久保「ちょ!!勝ち逃げかよ!!」

城「ほ、ホントに詰んでる!?結局8万円もスっちゃった……。」

大久保「お前ー絶対戻ってこいよ!!リベンジしたるからなー!」

窈「失礼。彼が戻ってくるまで私と一局如何ですか?」

大久保「お?なんや?アンタもイケる口か?」

窈「ええ、指せますよ。「棋士に成ったこともある」ので。」

城「(えっ、この人……悠さんとそっくり?!)」
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