ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸学園・道場ー

悠「……もっと教えてくれませんか」

十兵衛「ああ。よろこんで引き受けよう」

悠「ありがとうございます」

十兵衛「ふふ。礼には及ばない。それが私の仕事だからな。」

悠「っても、おれはここの生徒じゃないっすけどね」

十兵衛「男が細かいことを気にするもんじゃない。」

悠「さすが美人は寛大っすね」

十兵衛「ふふ。面白いことをいう。今回は特別に入会特典をつけてやろう」

悠「特典?」

十兵衛「ああ、これをやる」

指南役は自らが佩いていた刀をおれに投げ渡す。

悠「え?」

十兵衛「これからはその刀を使え。帯刀の許可は指南役の私から申請しておこう」

悠「ありがたいですが……いいんすか?」

指南役は目を細めてにやりと笑った。

十兵衛「ふふ、剣魂も刻まれていない普通の刀だよ。見た目ははったりさ。まぁ、業物でこそないが丈夫で悪い刀ではない。護身程度になら十分な力になってくれるだろう」

悠「まぁ、おれは無手が基本すけどね。」










ー大江戸学園・教室ー

新「あーーっ!どこにいってたの、悠!?」

指南役と別れて教室に戻ってきたとたんに泣きそうな顔をして新が駆け寄ってきた。

悠「どしたよ、なにがあった?」

新「悠がいないから……いないから……」

悠「新…」

新「お昼ご飯が抜きになっちゃったんだよ~!!」

膝から崩れ落ちそうになる。

悠「なんだ、そんなことかい…」

新「なんだ、そんなことかじゃないよっ!!午後の授業中にお腹がすいて死んじゃうかも知れないんだよ!?」

悠「大袈裟な…」

新「ぶううう!!」

しかし…午後の授業はずっと新の腹の虫の声を聞いて過ごすことになる。






ー大江戸学園・日本橋ー

悠「はぁ…」

新「もぎゅ?」

悠「もぎゅ?じゃねーよ」

学校からの帰り道をおれとならんで歩く新のやつは、コンビニ袋一杯のおにぎりを手に提げている。
あまつさえ店に着くわずかな間も待ちきれないのか、一個くわえてやがるし。

悠「なぁ、新さんよぉ。それはアレか?昼休みの復習のつもりなのか?ん?」

新「もぐもぐ……ごくん。なに?」

悠「いや、なんでもなかとです」

仕返しとかそういうんじゃないな。裏も駆け引きもなく腹が減ってただけだ。

新「でも悠ため息ついてたよ。」

悠「いや、小鳥遊堂のエンゲル係数の高さに頭を抱えてただけだ」

新「エンゲル係数ってなあに?」

悠「生活費に対する食費の占める割合」

新「むむむ」

悠「なにが、むむむだ。要するにだ、小鳥遊堂の儲けが全部お前の食費になってるってことだよ」

新「あはは。まさか~」

悠「その大量のおにぎりを見てそういえるのがすごいなお前…。」
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