ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【3】

ー絶命号:船内(下層)ー

ジェリー・タイソンが腕を突きのばしたまま突貫してくる。半身を翻してその巨腕を避けて背後に陣取ろうとしたが、奴は急ブレーキ急ターンで即座におれを見定めた。

悠「(こんな技見たことねえ。しかも即座に方向を変えてきやがったなんてバネしてやがる!)」

またもあの妙な構えのままの突貫、こちらもなんとか半身を翻して避けようとしたが胸元を拳がカスった。同じような動きだが精度が上がっている。

タイソン「HAHAHA!甘いぜBOE!」

ANYTIME(いつまでも)!FOREVER(いつまでも)!ENEMY(敵)をDESTROY(滅ぼす)するまで追い続ける!

それが私のSHOIKEI(ショーケイ)ーKEMPO(ケンポー)!!!

ジェリー・タイソン32歳、米国デトロイト出身。

少年時代よりスポーツ全般に秀でる。ことさら短距離走の才能は群を抜いており、15歳にして全米選抜に抜粋される。

17歳のとき、乳の都合により、一家は中国へ移り住む。新天地でジェリーが出会ったもの、それは……中国拳法。

象形拳:あらゆる動物の動作を模倣し戦う中国拳法の流派。拳の理合いに野生の力を取りこんだ驚異の武術である。

ジェリーはここでも持ち前の運動神経を威嚇なく発揮。わずか五年で師をも超える実力を身に着けた。

だがこの頃、彼の脳裏にひとつの疑問が浮かぶ。

『なぜ獣なのか?』

彼らが圧倒的に力を誇った時代は人類の進化とともに終焉を告げられた。今や武装した人間の方が圧倒的な脅威である。

なぜ、人より弱いけものを模倣せねばならないのか?『人より弱い』…!!そうか!!真に模倣すべきなのは『人』!!否……模倣すべきは『兵器』!!

七年後、近代兵器を模倣する【J式象形拳(JERRYSHOIKEIKEMPO)】は完成した。

その中でも最高傑作はこれSCUDMISSILE(スカッドミサイル)!何度かわされても即座に軌道修正!全身を連動させ超スピードで突進。全質量を相手に叩きこむ剛拳だ!

「バカが!サイドががら空きだ!」

悠に向かって突貫していくジェリーの側面から別の闘技者が殴りかかったが身体に触れた瞬間逆に吹き飛んだ。

タイソン「バカはキミだ!我がKEMPOに死角はNOTHING!!」

体重約100キロで高速移動中の私に攻撃を仕掛けるのは、自ら大型トラックに突っこむのと同義。自殺行為DEATH!!

ジェリーはそのままさらに加速して倒れている闘技者は踏み潰し、軌道上に居る闘技者は撥ね飛ばし無差別になぎ倒していく。

タイソン「私の「スカッド」は乱戦時に最大限のポテンシャルを発揮する。大人しく喰らっておきなさい!」

遂に奴はおれを正面に捉えた。握っていた拳を解いて両手を開く。

悠「すうぅっー……」

Good!ようやく諦めましたか!素晴らしい!人間諦めがカンジ……ン?

拳が着弾したと思った瞬間、大きく体が右へと曲がった。

【小鳥遊流:冬花ノ型枝垂れ柳】

タイソン「What!?軌道を無理やり変えられた!!?」

悠「前見た方がいいぞおっさん。」

タイソン「WAAAAAH!!」

おれの声に視線を前に向けるが少し遅かった。すでに目と鼻の先の距離に壁が迫っていたのだ。
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